A型の事業所数は、いま減り始めています。「報酬改定で経営が難しくなった」という説明もよく見かけます。ただ、A型はもともと、利用者と雇用契約を結び、最低賃金以上の賃金を払うサービスです。A型は制度改正で難しくなったのか。それとも、もともと求められていたことに、基準と報酬が後から合わせてきたのか。順に確かめます。
この記事の要点
- A型は福祉サービスであり、雇用契約を結んで働く場。一般就労への足場と、働き続ける場の両方の役割がある
- 急増した2012〜2015年度の基本報酬は、働いた時間や生産活動の結果にほとんど連動していなかった
- 基準と報酬は、労働時間、賃金の財源、生産活動の結果を順に見るように見直された
- 利用者20人が1日4時間働くと、賃金だけで年約2,260万円。それを生み出す仕事の設計が要る
A型の基本:雇用契約を結び、生産活動の収入から賃金を払う
| 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
|---|---|---|
| 利用者との関係 | 雇用契約を結ぶ(労働者) | 雇用契約を結ばない |
| 支払うもの | 賃金(最低賃金以上) | 工賃 |
| 利用者への労働法規・社会保険の適用 | 適用される(労働時間・休憩、条件に応じて雇用保険・社会保険) | 原則として適用されない |
| 賃金・工賃の財源 | 生産活動の収入(給付費を充てるのは原則禁止) | 生産活動の収入 |
法令は、A型を「雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供」と、就労に必要な知識や能力を高める訓練などを行うサービスと定めています。利用期間に上限はありません。主な対象は、一般企業で働くことはいまは難しいものの、支援を受ければ雇用契約に基づいて働ける人です。事業所には、管理者、サービス管理責任者、職業指導員・生活支援員を基準に沿って置く必要があります。仕事の例は、検品・梱包・組立、清掃、食品加工、農業、データ入力などです。(注1)
国の資料は、A型の役割として「企業等での就労に向けた訓練の場」と「就労困難性の高い方が働き続ける場」の両方を挙げ、どちらかを上に置いていません。一般就労への移行率だけでA型を評価しないことが、この記事の前提です。(注2)
急増した2012〜2015年度、報酬は働いた時間や生産活動の結果に連動していなかった
2010年代前半、A型の事業所と利用者は急速に増えました。同じ時期、平均賃金(月額)は平成18年度の113,077円から平成27年度の67,795円に下がっています。(注3)
当時の基本報酬は、職員配置と定員で決まる1日あたりの単価でした。利用者が何時間働いたか、生産活動でどれだけ稼いだかは、短時間利用の減算を除いて報酬に反映されませんでした。給付費を賃金に充ててはならないという規定も、2017年4月まで指定基準にありませんでした。(注4)
生産活動の収入が少なくても、給付費で賃金と運営費をまかなう形が、当時の制度では成り立ち得たと考えられます。ただしこれは制度の構造からの読み取りで、そうした事業所がどれだけあったかを示すデータはありません。国も急増の原因を分析した資料を出していません。
国が問題にしたのは、収益の乏しい仕事と、本人の意向にかかわらない一律の短時間・退所
2015年9月の国の通知は、不適切な運営の例として次の3つを挙げました。(注5)
- 生産活動:収益の上がらない仕事しかなく、最低賃金を払うのが難しい
- 労働時間:長く働きたい人の意向にかかわらず、全員を一律に短時間(例:週20時間)にしている
- 退所:一定期間後、本人の意向にかかわらずB型へ移すなど、不当に退所させている
通知は、短時間労働でも支給される特定求職者雇用開発助成金の受給のために一律に短時間にしている場合や、支給終了にあわせて退所させている場合にも触れています。問題にされたのは短時間勤務そのものではなく、本人の意向に関係なく一律にすることです。国はこれを「事例」として示しており、該当する事業所の数は示していません。
基準と報酬は、労働時間、賃金の財源、生産活動の結果を順に見るようになった
| 時期 | 見るようになったもの | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2012年度・2015年度 | 労働時間 | 短時間利用の減算 |
| 2017年4月 | 賃金の財源 | 生産活動の収支が賃金総額以上であること、給付費から賃金を払わないことを指定基準に明記。満たさなければ経営改善計画。新規指定で最低賃金を払える計画かを確認 |
| 2018年度 | 労働時間 | 1日の平均労働時間で基本報酬の区分が決まる |
| 2021年度 | 生産活動の結果など | スコア方式(5項目・最高200点)で基本報酬を決める |
| 2024年度 | 生産活動の結果 | 生産活動の収支が2年続けて賃金総額に届かなければマイナス10点、3年でマイナス20点、経営改善計画がなければマイナス50点 |
2020年にはコロナ禍の特例として、給付費を賃金に充てることが一時的に認められました。最も高い報酬区分は170点以上なので、2024年度からは、生産活動で賃金を払えないことが報酬に直接響きます。(注6)
筆者の読み方では、これらはA型を「難しくした」流れというより、雇用して生産活動で賃金を払うというA型の趣旨と、報酬・基準のずれを段階的に埋めてきた流れです。ただし、国がそう総括した資料はありません。
いまのA型は、福祉サービスと生産活動の2つの収支で成り立っている
- 福祉サービスの収支:収入は給付費、支出は職員の人件費や事業所の経費
- 生産活動の収支:収入は製品やサービスの売上、支出は材料費などの経費と、利用者の賃金
規模の感覚をつかむための試算です。利用者20人が1日4時間、月20日働くと、2026年度の地域別最低賃金の全国加重平均1,177円を使った試算では、賃金だけで月約188万円、年約2,260万円になります(社会保険料などは含まない)。実際の計画には、事業所の所在地の最低賃金を使います。これは目標の売上ではなく、賃金だけでこの額になるという例です。実際には材料費などもかかります。(注7)
利用者を集めれば成り立つ、とは限りません。20人分の給付費が入る一方で、20人が働けるだけの仕事を用意し、賃金と経費を賄える売上をつくる必要があります。最低賃金は2026年度に前年度より56円上がりました。働く人が増えるほど、働く時間が延びるほど、最低賃金が上がるほど、生産活動で稼ぐべき額は増えます。
賃金を払えていない事業所は減ったが、なお約4割ある
生産活動の収支が賃金総額に届かず指定基準を満たしていない事業所は、令和3年3月末の58.3%から、令和6年3月末の37.4%(3,880か所のうち1,453か所)に下がりました。ただし、経営が改善したのか、廃止や転換で対象が入れ替わったのかは、公表資料では区別できません。(注8)
平均賃金は令和6年度に月91,451円です。最低賃金の上昇や労働時間の変化も含む数字で、生産活動の収益力が上がったことだけを示すものではありません。(注9)
事業所は減り始め、2024年度には働いていた人の解雇も起きた
A型の事業所数の伸び率は、令和5→6年度に▲1.96%、令和6年第1四半期→7年第1四半期に▲5.02%へと転じました。2026年6月の新規指定の報酬引き下げでA型が対象外になったのは、この伸びの条件を満たさなかったためです。(注10)
ハローワークが把握したA型の解雇者は、令和6年度に7,292人でした。A型の閉鎖や縮小は、事業者の経営の問題であると同時に、そこで働く人が働く場と賃金を失うことでもあります。国の委託調査では、回答した92自治体の範囲で、2024年1〜7月に259か所が廃止や転換などをしていました。時期は2024年度の改定と重なりますが、改定が原因かどうかは確かめられません。(注11)
開業前の確認リスト
- 利用者にどんな仕事を用意するか。取引先、単価、受注量の見通し。利用者が増えたときに仕事も増やせるか
- 利用者数・労働時間・最低賃金から賃金総額を逆算し、生産活動の収支で賄えるか。最低賃金が上がっても払えるか
- 一人ひとりの希望・体調・能力に合わせて労働時間を組めるか。長く働きたい人に応える仕事があるか
- 2つの収支を毎月分けて把握し、生産活動の赤字に早く気づけるか
- 販路を開いて仕事を回す人と、利用者を支える人がいるか
- この見通しを、指定申請で根拠とともに説明できるか
A型は「利用者を集められるか」から「働き続けられる場を続けられるか」へ
一次資料から言えるのは、A型が制度改正で突然難しくなったのではなく、当初から求められていた「雇用して賃金を払う」ことが、基準と報酬の上で後から問われるようになった、ということまでです。本業の一部の工程を切り出せる、安定して発注してくれる取引先がある、といった仕事の当てがある事業者にとって、A型は、人が働いて賃金を得る事業そのものをつくる選択肢になります。
注と出典
- 障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号
- 社会保障審議会障害者部会 第112回 資料5(2021年6月、PDF) p.30、今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 報告書(2026年2月、PDF) p.16〜18
- 報酬改定検討チーム 第9回 資料3(2017年9月、PDF)。国は精神障害のある利用者が増え、長時間働くのが難しい人が増えたことを要因の一つに挙げている
- 障害者部会 第85回 資料6(2017年6月、PDF)、指定基準第192条(2017年4月施行)
- 障障発0908第1号(2015年9月8日)。助成金の離職割合要件は2017年5月から「50%超で不支給」が「25%超で不支給」に。島根労働局の案内(PDF)
- 障障発0330第4号(2017年3月30日)、報酬改定検討チーム 第38回 資料2(2023年10月、PDF)、厚生労働大臣が定める事項及び評価方法(2024年3月改正)、コロナ対応の取扱い 第5報(2020年5月、PDF)
- 令和8年度地域別最低賃金(厚生労働省)。全国加重平均1,177円(前年度1,121円)、都道府県別1,085〜1,280円、発効は2026年10月1日〜12月2日。試算は20人×4時間×20日×1,177円=月1,883,200円
- 注6の第38回資料2 p.20、障害者部会 第145回 資料(2025年1月、PDF) p.6〜7。基準を満たさない1,453か所の74.9%は前年度も満たしていなかった。経営改善計画の提出率92.6%
- 令和6年度工賃(賃金)の実績について(PDF)
- 報酬改定検討チーム 第51回 資料1(2025年12月、PDF) p.7、p.14
- 研究会 第7回 参考資料2(2025年6月、PDF)。各月10人以上の解雇があった事業所の集計で、全数ではない。令和7年4月末で再就職2,171人、B型などへの移行(予定)3,834人。令和6年度障害者総合福祉推進事業 報告書(2025年3月、PDF) p.26。内訳は完全廃業114、B型への転換93など
更新日:2026年10月16日 執筆:行政書士 大塚栄一

