社会福祉法人は、設立に所轄庁の認可が必要な「本格的な福祉の法人」というイメージがあります。では、障害福祉で開業するなら社会福祉法人のほうが有利なのか。法人格は開業準備の最初に決め、後から変えにくい選択です。結論を先に書くと、サービスを提供して報酬を受け取るという事業の土俵は、法人格でほとんど変わりません。違いは、法人そのものの側に集まっています。
この記事の要点
- 社会福祉法人は設立の入口が高い(認可、役員・評議員で最少15人、資産要件)
- 指定・運営基準・報酬は、法人格でほぼ変わらない
- 例外はA型。社会福祉法人以外は、社会福祉事業だけを行う法人でなければならない
- 違いは法人税・補助・利益の扱い・監督に出る。事業計画から逆算すれば、合う法人格は選べる
法人格で、同じもの・違うもの
| 項目 | 社会福祉法人 | 株式会社・合同会社 | NPO法人 |
|---|---|---|---|
| 設立 | 所轄庁の認可 | 定款作成と登記 | 所轄庁の認証(社員10人以上) |
| 指定を受けられるか | 受けられる | 受けられる | 受けられる |
| 運営基準・報酬 | 同じ | 同じ | 同じ |
| A型の条件 | 「専ら社会福祉事業を行う」要件の適用なし | 社会福祉事業だけを行う法人に限る | 同左(知事が準ずると認めた事業は可) |
| 障害福祉サービスの法人税 | かからない | かかる | 原則かかる |
| 施設整備の補助 | 優先する自治体もある | 法人格があれば申請できる例も | 同左 |
| 利益の分配 | できない | 配当できる | できない |
| 法人への監督 | 所轄庁の監督が続く | なし(事業所の指導は同じ) | 所轄庁の監督 |
入所施設(障害者支援施設)は除いた比較です。
社会福祉法人は、設立の入口が高い
社会福祉法人は、所轄庁の認可を受けて初めて設立できます。理事6人以上、監事2人以上、評議員は理事より多く置き、評議員は理事・監事や職員と兼ねられないため、最少でも15人が必要です。事業に必要な資産も求められ、施設を持たない法人の基本財産を原則1億円以上とする自治体もあります。訪問系サービスなどには1,000万円以上に下げる緩和がありますが、原則5年以上(NPO法人や市町村長の推薦がある場合は3年以上)の対象事業の実績などが条件です。これから開業する人が、最初の法人として社会福祉法人を選べる場面は限られます。(注1)
指定・運営基準・報酬という事業の土俵は、法人格でほぼ変わらない
指定を受けるには法人であることが求められますが、法人の種類は問われません。人員・設備・運営の基準も同じで、報酬はサービスの種類・定員・利用者の状態・地域区分・加算で決まり、法人格は算定の要素に入っていません。報酬で気をつけたいのは、法人格より開業の時期です(2026年6月からの新規指定の扱い)。経営の結果も、法人の種類だけでは説明できません。(注2)
例外はA型。社会福祉法人以外は、社会福祉事業だけを行う法人に限られる
基準省令は、A型の事業者が社会福祉法人以外なら「専ら社会福祉事業を行う者でなければならない」と定めています。たとえば別の事業を営む会社が新しくA型を始める場合、その会社のままでは条件を満たさず、社会福祉事業のみを行う法人を別に設けるなどの対応が必要です。自治体によっては、定款の事業目的に社会福祉事業でないものがあると認めない運用もあります。NPO法人などには、知事が社会福祉事業に準ずると認めた事業は差し支えないという例外があります。(注3)
違いは、税・補助・利益・監督に出る
法人税:社会福祉法人の障害福祉サービスには法人税がかかりません。意外なのはNPO法人で、国税庁は障害福祉サービスを「原則、法人税法上の収益事業に該当」するとしています(従事者の半数以上が障害者などで、その生活の保護に役立つ事業は除く)。法人税は利益にかかるので、利益が大きくなるほど差が開きます。(注4)
補助:施設整備の補助では、社会福祉法人等を優先する自治体もあります。愛知県は、法人格があれば申請できるとしたうえで、公益性の観点から社会福祉法人や医療法人を優先すると案内しています。扱いは自治体によって違います。(注5)
利益と監督:社会福祉法人は、関係者に特別の利益を与えることが禁じられ、配当もできません。解散時の残余財産の帰属先は、社会福祉法人など法律で認められた者に限られ、帰属先が定まらない財産は国庫に入ります。事業所への運営指導とは別に、法人として所轄庁の監督(報告徴収・立入検査)も受けます。(注6)
開業前の確認リスト
- A型を始めるか。福祉以外の事業も同じ法人で営むつもりか
- 利益を出資者に配当したいか、すべて事業に戻すか
- 建物を自分で整備し、補助金を使う計画があるか
- 設立までの期間を待てるか。役員や社員を集める当てはあるか
- すでに法人があるなら、いまの定款の目的で新しいサービスを始められるか
社会福祉法人の有利さは、高い入口と重い規律と引き換え。事業計画から逆算すれば、合う法人格は選べる
社会福祉法人には、法人税で有利な点があり、施設整備の補助で優先される場合もあります。ただし、それは高い設立のハードルと、利益を外に出さず監督を受け続ける規律とセットです。指定・基準・報酬という事業の土俵は、どの法人格でもほぼ同じです。どのサービスを、どの規模で、利益をどう使いながら続けるのか。それを事業計画として描ければ、株式会社でもNPO法人でも、法人格はその事業を支える土台になります。
注と出典
- 社会福祉法(e-Gov法令検索)、特定非営利活動促進法(e-Gov法令検索)、神戸市「社会福祉法人の設立について」、居宅介護等事業の経営を目的として社会福祉法人を設立する場合の資産要件等について(伊勢市掲載、PDF)
- 申請者を法人と定めるのは都道府県・指定都市などの条例(例:京都府の条例第4条)。報酬算定構造には、地方公共団体が設置する一部の事業所の区分はあるが、法人の種類による区分はない(令和6年度報酬改定について)
- 指定基準(e-Gov法令検索)、解釈通知(障発第1206001号)、和歌山市「定款等の表記について」
- 法人税法施行令(e-Gov法令検索)、国税庁 質疑応答事例
- 愛知県「社会福祉施設等施設整備費補助金について」
- 注1の社会福祉法
更新日:2026年10月16日 執筆:行政書士 大塚栄一

