B型の利用者は、集まるのか。横浜市の収支見込表で、利用者の見込みの根拠をどう示すか

横浜市で生活介護や就労系の事業所を開くときは、事前相談の申込の時点で収支見込表を出します。開所した月から1年間、月ごとの登録者数と1日平均利用者数を書き、その根拠として「利用者の集め方、現時点で利用が見込まれる方の数等」を説明する様式です(注1)。

市は「開所後に当初の収支見込みとの乖離が大きく、運営が厳しくなるケース」があるとして、見込みをよく精査するよう求めています(注1)。利用者の見込みは、ほかの自治体でも事業計画の中心になる数字です。様式は自治体ごとに違うので、開業予定地の様式を確かめてください。

この記事の要点

  • 本人や家族が事業所を知る経路と、利用を始めるまでの手続き(支給決定・就労選択支援)は別のもの
  • 利用する事業所を選ぶのは本人。選ばれる理由をつくり、関係機関や本人・家族に届けることが集め方になる
  • 接点のある人を一人ずつ、意向・手続きの段階・開始月・通所日数で確かめる
  • 確認できた見込みと、今後の増え方の仮定を分けて書き、外れた場合の資金も用意する

事業所を知る経路と、利用を始めるまでの手続きは別のもの

一つは、本人や家族が事業所を知る経路です。開所前の事業所なら、本人や家族からの問い合わせ、相談支援や就労選択支援の事業所への説明、学校や医療機関とのつながり、説明会や見学といった接点が考えられます。指定を受ける前は、サービスとしての体験利用はできません。どの経路から来る人が多いのかを示す公表データも見当たりません。

もう一つは、利用を始めるまでの手続きです。B型を利用するには、市区町村の支給決定が必要です。横浜市では、区役所(福祉保健センターの障害相談窓口)で相談・申請し、計画相談支援の事業所が本人と一緒に進めます。新たにB型を利用する場合は、原則として就労選択支援のアセスメントも受け、そのうえで支給決定を受けて事業所と契約します(注2)。

※手続きの順番は、区や本人の状況によって異なる場合があります。(注2)(注3)をもとに当事務所が整理

説明会に来たことと、利用を始められることは同じではありません。接点を増やす努力と、その人が手続きのどこまで進んでいるかの確認は、分けて考えます。

就労選択支援で変わったこと、変わらないこと

2025年10月から、新たにB型を利用したい人は、原則として先に就労選択支援を利用することになりました。50歳以上の人、障害基礎年金1級を受給している人などは、このアセスメントを経ずに利用できます。近くに就労選択支援の事業所がない場合や待機が生じる場合は、就労移行支援の事業所などのアセスメントでも利用できます(注3)。

変わらないのは、どの事業所を利用するかを選ぶのは本人だという点です。国の通知は、就労選択支援の事業者が「本人の就労の可否や利用すべき就労系障害福祉サービス、利用する事業所等を判断・決定するものではない」としています(注3)。事業所の側には、選ばれるための働きかけをする余地があります。してはいけないことの線は、はっきりしています。

  • 紹介の見返りに、金品などの利益を渡すこと(注4)
  • 広告の内容を、虚偽や誇大なものにすること(注4)
  • 本人の同意なく、障害の状況などの情報を集めること(注5)

就労選択支援の事業所の側には、移行先が同じ法人に80%を超えて偏ると、正当な理由がある場合を除いて報酬が減算される仕組みもあります(特定事業所集中減算。移行そのものを禁じるものではない)(注6)。

開所前に、事業所の側でできること

初めて開業する法人には、工賃の実績も、利用者の感想もまだありません。開所前の事業所が見せられるのは計画です。工賃の見込みを示すときは、実績のように読める書き方を避け、前提を添えます。開所前にできることは、大きく三つです。

  • 選ばれる理由をつくる:生産活動の内容と工賃の見通し、支援の中身、開所する曜日と時間、送迎、立地
  • 関係機関に知ってもらう:区内の計画相談支援の事業所、就労選択支援の事業所、特別支援学校の進路担当、医療機関、地域活動支援センターなどへの説明
  • 本人や家族に直接届ける:説明会、見学会、ホームページやパンフレット。開所後は障害福祉サービス等情報公表制度で事業所の情報が公表される(注7)

これらは「開所の3か月前までに、区内の計画相談支援の事業所を訪問して説明する」といった形で計画として書けます。訪問件数や説明会の参加者数は、自分で数えられる実績になります。横浜市で4月に開くなら、遅くとも事前相談の申込(前年12月末)のころには動き始めておきたいところです。チラシやホームページ、会場の費用も収支見込表の支出に入れておきます。

一人ずつ確かめる6つのこと

市の様式が求めているのは「利用者の集め方」と「現時点で利用が見込まれる方の数」で、何を根拠とすべきかの公式な基準はありません。以下は当事務所の整理です。

確かめること見るポイント
① 経路問い合わせ・相談支援の事業所・説明会など。どの働きかけが効いているかの材料にもなる
② 本人の意向説明会に来たことと、利用したいと考えていることは別
③ 手続きの段階区への相談・申請、計画相談、就労選択支援、支給決定のどこまで進んでいるか
④ 利用開始の見込月開所の月に全員がそろう前提にしない
⑤ 週の通所日数報酬は利用のあった日ごとに計算される
⑥ 重複複数の経路で同じ人を数えていないか、ほかの事業所に決まった人が残っていないか

記録するときは、本人の同意を得て必要な範囲にとどめます。障害があることは「要配慮個人情報」とされ、取得には原則として本人の同意が必要です(注5)。

確認できた見込みと、増え方の仮定を分ける

一人ずつ確認できる見込みが限られる場合は、確認できた見込みの積み上げと、開所後にどのくらいのペースで増えると置いたかの仮定を分けて書きます。仮定の根拠は、集め方の計画とその実施状況です。たとえば、開所3か月目から月2人ずつ増える場合と月1人の場合を比べます。この件数や人数に公的な根拠があるわけではなく、新しい利用者が0人の月もありえます。

大切なのは、仮定の部分を、確認できた部分と同じ確からしさに見せないことです。分けておけば、どこが外れると収支が変わるのかを、自分でも、計画を見る側でも確かめやすくなります。確認できた見込みがごく少ない場合は、仮定で埋めるのではなく、集め方の計画、開所の時期、手元資金の厚みを見直す材料にします。単独のB型について、横浜市は運営規程の定員を20人以上としています(注1)。

登録者数と1日平均利用者数に落とし込む

収支見込表には登録者数と1日平均利用者数を書きます(注1)。報酬に直接つながるのは1日平均利用者数です。登録者10人が全員月初から週4日通い、事業所が週5日開くなら、1日平均は10人×4日÷5日で8人。定員20人の4割です。実際には月の途中から始める人や欠席があり、これより小さくなるのが普通です。

※人数・通所日数・開始月は説明のための仮定で、全員が月初から欠席なく通い、週5日開所とした簡略例です。

一方で、開設から6か月未満は、実際の利用者数にかかわらず定員の90%を利用者数として人員配置を考えます。遅れの想定は、手続きの見通しが立っていない人の開始月を後ろに置き直し、仮定の増え方を緩めて作るほうが、根拠を説明しやすくなります。市は、赤字の月があれば、それに耐えられる自己資本を説明するよう求めています(注1)。

  • 集め方を、いつまでに、どこに、何をするかの計画として書いたか
  • 接点のある人を、経路と手続きの段階で分けたか
  • 一人ずつ開始月と通所日数を置き、登録者数と1日平均利用者数を分けて出したか
  • 仮定が外れて開始が遅れても、手元資金で越えられるか

就労継続支援B型の開設を検討している方へ

利用者の集め方の計画と、収支見込表の登録者数・1日平均利用者数の根拠を、事前相談の前に一緒に整理します。

更新日:2026年10月23日 執筆:行政書士 大塚栄一