横浜市の「事業所運営に係る収支見込表」(様式6)は、登録者数と1日平均利用者数に続けて、月ごとの「自立支援給付費」と、その「算定根拠」を書くよう求めています。算定根拠の欄には「基本報酬の想定単位、算定予定の加算の種類等を元に」説明するよう書かれています(注1)。
迷うのは、どの単価を使うかです。新しく開く事業所には前年度の工賃の実績がなく、2026年6月からは新規指定の事業所に臨時の特例もかかっています。既存事業所の実績や単位数表の上の区分をそのまま使うと、見込みは高くなります。2026年10月時点の制度で、開業時の給付費をどう積算するかを確かめます。
※制度や様式は改定されることがあります。最終的には、市の最新の資料と窓口で確認してください。
この記事の要点
- 給付費は、基本報酬と加算の単位数に1単位の単価(横浜市のB型は10.91円)を掛けて積算する
- 新規指定の初年度は、平均工賃月額1万円未満の区分とみなす。6か月を過ぎると実績で上の区分を使える場合がある
- 2026年6月1日以降の新規指定は、基本報酬(サービス費Ⅰ〜Ⅲ)に1000分の984を掛ける。令和9年度報酬改定までの特例
- 1日平均8人・開所22日の計算例で、報酬の総額は約126万円(利用者負担を差し引く前)
給付費の積算の基本
B型の基本報酬は、利用のあった日ごとに1日単位で算定します。月の基本報酬は「1日あたりの単位数 × 延べ利用日数(1日平均利用者数×開所日数)」です。そこに加算の単位数を積み上げ、福祉・介護職員等処遇改善加算は、基本報酬とほかの加算を合わせた単位数に加算率を掛けて出します(注2)。
1単位の単価は、所在地とサービスの種類で決まります。横浜市は「二級地」で、就労継続支援の1単位は10.91円です(注3)。単位数に割合を掛けたときはそのたびに小数点以下を四捨五入し、金額に直すときは1円未満を切り捨てます(注2)。
基本報酬は、どの区分で算定するか
基本報酬は、報酬体系、職員配置、利用定員、平均工賃月額の区分の組み合わせで決まります。報酬体系は、平均工賃月額に応じた体系(サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ))と、参加型((Ⅳ)〜(Ⅵ))の二つ。定員20人以下・平均工賃月額1万円未満の区分なら、6:1は590単位、7.5:1は537単位、10:1は490単位です(注4)。単位数の高い配置を選べば、その分職員を多く置くことになるので、人件費と一緒に決めます。
初年度は「平均工賃月額1万円未満」とみなす
前年度の実績がない新規指定の事業所について、国の留意事項通知は次のように定めています(注5)。
- 初年度の1年間は、平均工賃月額1万円未満の場合とみなして算定する
- 年度の途中に指定を受けた事業所は、初年度と2年度目の1年間をそうみなす
- ただし、支援の開始から6か月を過ぎた月からその年度の3月までは、開始後6か月間の平均工賃月額に応じて算定できる
※参加型(サービス費(Ⅳ)〜(Ⅵ))には平均工賃月額の区分がありません。
上の区分で算定するには区分変更の届出が要ります。単位数が増える届出は、15日までに出せば翌月から、16日以降なら翌々月から算定するのが原則ですが(注6)、6か月の実績による区分変更にどう当てはまるかは、事前相談の段階で市に確かめてください。6か月後に使う区分の表は、2026年6月に基準額が見直されたもので、新しく開設する事業所は見直し後の表の対象とされています(注7)。定員20人以下・6:1なら、1万円以上1万5千円未満で673単位、1万5千円以上1万8千円未満で682単位です(注4)。上の区分は、生産活動の収入から工賃を払えたときに初めて使えるものです。
2026年6月以降の新規指定は、基本報酬に1000分の984
2026年6月1日以降に新規に指定を受けたB型事業所は、平均工賃月額に応じた体系(サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ))の基本報酬に1000分の984を掛けて算定します(注8)。令和8年度報酬改定で設けられた臨時応急的な特例で、期間は令和9年度報酬改定までの間です(注9)。改定後の月は、内容を確かめて計算し直す必要があります。
掛けるのは基本報酬だけです。国が定める離島・中山間地域などの事業所、都道府県の公募で不足地域に設置された事業所や開設時に自治体の補助等を受けた事業所(運営費や人材確保の補助は含まない)、一部の体制加算を算定した月などは適用されません(注8)。初年度・6:1・定員20人以下なら、590×984/1000=580.56で、581単位です。673単位・682単位の区分に移った場合は、それぞれ662単位・671単位になります。
加算は、開業時に算定できるものから入れる
- 初期加算:利用開始から30日(暦日)の間、実際に利用した日に1日30単位(注10)。2か月目以降は新しく利用を始めた人の分が中心になる
- 処遇改善加算:B型は2026年6月以降7.4%((Ⅳ))〜10.9%((Ⅰ)ロ)。(Ⅳ)でもキャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ、職場環境等要件などがある。令和8年度は誓約でも算定できるが、対応していなければ返還になる(注11)。加算額に相当する分は職員の賃金改善に充てる(注12)
- 体制が要る加算(福祉専門職員配置等加算、送迎加算など)は、その体制の人件費や費用も一緒に入れる。前年度の実績が要件の加算は、1年目には入れられない(注4)
計算例:1日平均8人の月
横浜市(二級地)、2026年6月1日以降の新規指定で特例が適用、サービス費(Ⅰ)・定員20人以下・6:1、初年度のみなし、処遇改善加算(Ⅳ)とします。1日平均8人、開所22日で延べ176日。開所月に10人全員が月初から利用を始め、176日すべてが利用開始から30日以内に収まる前提です。
| 項目 | 計算 | 単位数 |
|---|---|---|
| 基本報酬 | 581単位 × 176日 | 102,256 |
| 初期加算 | 30単位 × 176日 | 5,280 |
| 処遇改善加算(Ⅳ) | 107,536単位 × 7.4%(四捨五入) | 7,958 |
| 合計 | 115,494単位 × 10.91円(1円未満切り捨て) | 1,260,039円 |
※利用者負担を差し引く前の報酬の総額です。減算に該当しない前提で計算しています。当事務所が報酬算定構造・単価の告示・留意事項通知をもとに作成した例です。
様式6の「自立支援給付費」は、ここから利用者負担を除いた額になります。2か月目は月初に始めた人の初期加算がなくなり、同じ8人でも金額は下がります。請求は利用者ごとに計算するので端数の分だけずれ、減算に当たれば基本報酬が下がります。給付費が入るのはサービス提供月の翌々月です。
算定根拠の書き方と、市に確かめること
横浜市の記載例は、算定根拠を式の形で書いています(注1)。上の計算例なら、「基本報酬単位:581単位(新規指定の初年度のため1万円未満の区分590単位×1000分の984)× 各月の1日あたりの平均利用者数 × 開所日数22日」「初期加算:30単位 × 利用開始から30日以内の延べ利用日数」「処遇改善加算(Ⅳ):合計単位数 × 1000分の74」「給付費はサービス提供月から2か月遅れで計上」「令和9年度報酬改定後の月は見直す」といった形です。様式や記載例は改められることがあるので、提出時点のものを確かめてください。
通知の文言だけでは決めきれない点もあります。事前相談の前に、次の3点を市に確かめておくと、算定根拠を書き直さずに済みます。
- 6か月の例外は、何か月目の届出で何月分から使えるか。年度途中の開所で2年度目にも使えるか
- 1000分の984の特例が自分の事業所に適用されるか(適用除外に当たらないか)
- 処遇改善加算の計画書と体制の届出を、新規指定の事業所はいつまでに出すか
就労継続支援B型の開設を検討している方へ
報酬体系・職員配置・定員の組み合わせから、収支見込表の給付費と算定根拠を、事前相談の前に一緒に組み立てます。
出典
- 横浜市健康福祉局「日中活動系サービス」(2026年9月29日更新)「事前相談に係る資料(202604時点)」 様式6と記載例
- 厚生労働省 留意事項通知(障発第1031001号)令和8年度改正 第二の1の⑴(端数処理)p.8〜9
- 「一単位の単価」(平成18年厚生労働省告示第539号)。二級地の就労継続支援は1000分の1091
- こども家庭庁・厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和8年度) 就労継続支援B型 p.25〜28
- 留意事項通知 第二の3の⑸の②の㈢ p.292〜293
- 留意事項通知 第一の1の⑷ p.5
- 「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.2」(2026年7月13日) 問3。VOL.1(2026年3月31日) 問27
- 令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号(第14の1の注17)、留意事項通知 第二の3の⑸の②の㈤ p.293〜294
- Q&A VOL.1 問4〜問6
- 留意事項通知 第二の3の⑸の⑦(第二の2の⑹の⑧を準用)
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(2026年2月18日) p.3〜4
- 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分、障障発0331第1号、2026年3月31日)
更新日:2026年10月23日 執筆:行政書士 大塚栄一

