障害者グループホームは、いまも参入しやすいのか。「需要がある」だけでは成り立たない理由

障害者グループホーム(共同生活援助、以下GH)は、この10年で最も伸びた障害福祉サービスの一つです。「需要がある」「小さな物件から始められる」「入居者がいれば継続的な収入を見込める」と言われてきました。2025年以降、国は地域によって供給過剰の可能性があると認め、参入の入口と運営のルールを作り替えています。GHはもう参入すべきでない事業なのか。参入しやすさと、事業としての可能性を分けて考えます。

この記事の要点

  • 急増期には「入口の低さ・政策としての需要・平均で見た利益」の3つがそろっていた
  • 国はいま、地域ニーズの確認、総量規制、ガイドラインなどで入口と運営のルールを作り替えている
  • 平均では黒字。ただし類型ごとに4割前後が赤字で、小規模な定員区分には平均でも赤字の区分がある
  • 「小さく始められる」と「小さくても利益が出る」は別。誰を、どこまで自前で、どの規模で支えるかで結果が分かれる

GHの基本:地域の住まいで、夜間を中心に暮らしを支える

GHは、障害のある人が主に夜間、共同生活を営む住居で、相談や入浴・排せつ・食事の介護などの日常生活の支援を受けるサービスです。日中は仕事や通所先で過ごし、夜と休日をGHで過ごす、という暮らし方が基本です。共同生活住居の定員は原則2〜10人で、既存建物の活用には例外があります。1人で暮らすサテライト型住居もあります。職員は、家事や相談を担う世話人、介護を担う生活支援員(包括型・日中サービス支援型)、個別支援計画をつくるサービス管理責任者、そして管理者です。(注1)

類型介護など夜間の体制区分4以上の割合
外部サービス利用型世話人が家事・相談。介護は外部の居宅介護に委託基準なし7.6%
介護サービス包括型生活支援員が介護も自前で行う基準なし(夜勤の体制は加算で評価)44.1%
日中サービス支援型日中も住居で支援する住居ごとに夜間の職員1人以上が基準78.9%

(注2)

急増期には、「入口の低さ・政策需要・利益」の3つがそろっていた

介護サービス包括型(以下、包括型)の事業所は、平成26年度の4,981か所から令和4年度の10,150か所へ、8年で約2倍になりました。利用者は76,932人から140,030人に増えています。(注3)

  • 入口の低さ:小さな住居で始められ、従来の指定は事業者の専門性を入口で選別する仕組みではなかった。国自身が「専門性が明らかに低いと思われる事業者であっても、指定要件を満たしていれば指定せざるを得ない状況」と書いている
  • 政策としての需要:国は入所施設から地域の暮らしへの移行を進めており、GHはその主な受け皿
  • 平均で見た利益:令和4年度決算の包括型の収支差率は9.1%

急増の原因を国が分析した資料はないため、原因とは言い切りません。ただ、この3つが同時にそろっていたことが「参入しやすい」という評価の背景にあったと考えられます。(注4)

急増のなかで、需給のずれと支援の質が問題になった

2025年12月の国の資料は、地域によってニーズに比べて供給が過剰になっている可能性に触れ、指定権者へのアンケートでも、総量規制の対象に加えたいサービスとしてGHを挙げた割合が最も高かったとしています。支援の質については、2022年の障害者部会報告書が、実績や経験の乏しい事業者の参入が多く、質の低下が懸念されるとしていました。(注5)

2024年には、複数の自治体でGHを運営していた法人で食材料費の過大徴収などが認定され、指定取消と連座制が適用されました。国はこれを広範囲に影響する処分事例として挙げていますが、この事案をGH全体の姿とみなすことはできません。(注6)

国は、参入の入口と運営のルールを作り替えている

対応する問題見直し状況(2026年10月時点)
需給のずれ新規指定で、開設予定市町村との調整状況やニーズ調査の実施状況を確認(指定のガイドライン)2026年6月に通知
需給のずれ総量規制の対象に。自治体が総量規制を実施する地域では、需給に応じて新規指定を制限できる2027年4月施行
支援の質運営と支援のガイドライン。食材料費の残りを事業者の収入にすることは認めない2026年2月に公表
支援の質地域連携推進会議で、運営の状況を地域に報告2025年度から義務
収支新規指定の基本報酬を1000分の972に(包括型・日中サービス支援型)2026年6月施行
支援の質管理者に障害者支援の実務3年以上と研修修了、職員の基礎研修案(決定はまだ)

(注7)

これは「GHを減らす」見直しというより、「誰が、どこに、どういう質で参入するか」を選ぶ見直しと読めます。参入のハードルは上がりますが、地域のニーズを確かめ、必要な支援体制を組める事業者を締め出す方向ではありません。

平均では黒字。それでも4割前後の事業所が赤字

令和8年1〜3月の利用者は、3類型で合わせて20万人を超えます。国は2027年度からの基本指針で、強度行動障害や高次脳機能障害、医療的ケアが必要な人などのGH利用の見込みを、自治体に個別に立てるよう求めています。重度の人の住まいは、政策上もはっきり必要とされています。(注8)

令和6年度決算収支差率赤字の事業所の割合
介護サービス包括型6.9%39.0%
日中サービス支援型5.1%42.8%
外部サービス利用型2.4%45.6%

包括型は、平均の収支差率が前年度の5.0%から6.9%に上がった一方、赤字の事業所の割合も34.3%から39.0%に上がりました。平均の値だけでは、個々の事業所の結果は説明できません。(注9)

結果を分ける条件①:誰を、どこまで自前で支えるか

定員1人あたりの年間収入は、外部サービス利用型118万円、包括型248万円、日中サービス支援型395万円です。1事業所あたりの職員(常勤換算)は5人、6人、9人です。包括型の基本報酬は、区分6の600単位から区分1以下の171単位まで、障害支援区分で決まります。区分が重い人ほど、生活支援員の配置も手厚く求められます。(注9)

重い人を受け入れれば単価は上がり、職員や夜間の体制、研修も必要になります。介護を外に任せれば職員は少なく済みますが、収入も小さくなります。誰を受け入れ、どこまでを自前の職員で支えるかの選択が、売上・人件費・必要な専門性をまとめて決めます。

結果を分ける条件②:規模。小規模な定員区分には、平均でも赤字の区分がある

包括型・事業所全体の定員収支差率(令和6年度決算)
4人以下−3.0%
5人−5.5%
6人+3.0%
7人−7.5%
8人以上の6区分すべてプラス

区分ごとの事業所数は13〜51と少なく、国も参考数値としています。「何人以上なら黒字」という線は引けず、規模と利益の因果関係も分かりません。これは住居ごとではなく事業所全体の定員です。(注10)

それでも、制度上「小さく始められる」ことと、経営上「小さな規模で利益を出しやすい」ことは別です。小規模な区分ほど定員1人あたりの支出が重く、5人の区分では収入287万円に対し支出303万円でした。定員5人の事業所で1人が退去すれば入居者は2割減りますが、建物の賃料や管理者・サービス管理責任者・夜勤の体制は、同じ割合ではすぐに減りません。

開業前の確認リスト

  • どの地域で:その地域の見込量と、市町村との調整の見通し
  • 誰を、どの類型で:受け入れる人の区分と特性、どこまでを自前の職員で支えるか
  • どの規模で:住居の数と定員、将来の住居の増やし方
  • 収入と人件費:新規指定の特例を含めた報酬と、夜間を含む体制の人件費
  • 空室への耐性:何室が何か月空いても、固定的な費用を負担できるか
  • 物件:サービスの基準、建築基準法、消防法を契約前に確かめたか(物件の記事を参照)

GHは、需要があるだけでは成り立たない。地域・規模・支援体制の設計で結果が分かれる

GHの参入の入口は、以前より高くなりつつあります。しかし、参入のハードルが上がることと、事業としての可能性が下がることは同じではありません。利用者は増え、重度の人の住まいは政策上も求められ、収支は平均でプラスです。必要な支援を提供できる体制と、それを支える経営の仕組みを組める事業者にとっては、なお検討する価値のある事業です。

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注と出典

  1. 障害者総合支援法第5条第17項、指定基準(e-Gov法令検索) 第210条
  2. 指定基準第208条・第213条の4、報酬算定構造(平成18年厚生労働省告示第523号)。区分4以上の割合は報酬改定検討チーム 第40回 資料2(2023年10月、PDF)の区分別利用者数(令和4年12月)から計算
  3. 注2の第40回資料2
  4. 障害者部会 第153回・障害児支援部会 第17回 合同 資料2(2025年12月、PDF) p.7、令和5年経営実態調査結果(PDF) 第17表
  5. 注4の合同資料2 p.7(回答割合の数値は記載なし)、障害者部会報告書(2022年6月、PDF) p.15
  6. 株式会社恵の不正行為等への対応について(2024年6月、PDF)、障害者部会 第156回 資料3(2026年6月、PDF)
  7. 指定のガイドライン(2026年6月30日)、障害者総合支援法施行規則第34条の20(2027年4月1日施行)、共同生活援助の運営や支援に関するガイドライン(2026年2月、PDF) p.17〜18、令和8年度報酬改定における改定事項(PDF) p.19・p.21、注6の第156回資料3。管理者要件と研修は、2026年10月16日時点で案の段階。案のとおりなら、2027年度以降に新規開設するGHは、開設時から管理者に3年以上の実務経験が必要になる(研修の修了には経過措置を設ける案)(WAM NETの2026年8月27日の記事でも案と紹介)
  8. 報酬改定検討チーム 第62回 参考資料(2026年8月、PDF)、基本指針(令和8年告示第4号、PDF)
  9. 令和7年経営概況調査(第48回報酬改定検討チーム 資料4・5)。有効回答率40.0〜45.5%。赤字の判定基準は資料に記載なし
  10. e-Stat 令和7年経営概況調査 参考表1 第47表。収支差率は表の収支差÷収入で計算(6人の区分は455千円÷15,430千円=2.95%)。GHの事業所は平均3.7か所の住居を運営し、住居1か所だけの事業所は35.2%(令和6年度報酬改定検証調査「共同生活援助における経営状況等調査」(PDF))

更新日:2026年10月16日 執筆:行政書士 大塚栄一