就労継続支援B型は、新規参入の多いサービスでした。ただ2024年から2026年にかけて、報酬の計算方法が見直され、就労選択支援が始まり、新規指定で確認される内容も具体的になりました。需要は続いています。変わったのは、収益の出方と、新しく参入する側に求められることです。
この記事の要点
- B型の利用者は約35万人。令和6年度には新規事業所が2,027あり、78%が営利法人だった
- 収支差率や報酬区分の分布は、報酬の仕組みや計算方法の変更でも動いてきた
- 2025年からは、新規指定で生産活動の中身と収入の根拠まで確認される
- 問われるのは「指定を取れるか」より「工賃を払える生産活動を組めるか」
需要はなくなっていない。新規参入は令和6年度に年2,000を超えた
B型を使う人は約35万人で、この10年で事業所も利用者も約2倍になりました。一般企業で働くことが難しい人の働く場として、需要は続いています。(注1)
| 年度 | 新規事業所 | うち営利法人の割合 | 年度末の事業所数 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 1,521 | 約65% | 15,070 |
| 令和4年度 | 1,618 | 70% | 16,187 |
| 令和5年度 | 1,670 | 73% | 17,295 |
| 令和6年度 | 2,027 | 78% | 18,704 |
この数字は、2025年以降の見直しより前のものです。見直しの後に新規事業所数がどう変わったかは、まだ公表データでは確認できません。(注2)
収益の出方は、報酬の仕組みでも動いてきた
利用時間が短い事業所ほど、収支差率が高かった。 財務省の予算執行調査(令和5年度実績、5,113か所)では、平均利用時間4時間未満の事業所の収支差率は17.0%で、全体の9.9%を上回りました。財務省は、報酬が利用時間をほとんど勘案していないことを指摘しています。ここから言えるのは「短時間の事業所で高い収支差率が見られた」までで、因果関係までは確かめられません。障害の特性で長い時間の利用が難しい人もいます。(注3)
平均工賃の計算方法が変わり、報酬区分が上がった。 2024年の改定で、平均工賃月額を「1日当たりの平均利用者数」で割る方式に変わりました。全国平均は令和5年度22,649円、令和6年度24,141円です。ただし令和4年度以前とは計算方法が違い、そのまま比べられません。(注4)
計算方法の変更で、平均工賃1万5千円以上の区分の事業所が1年で3,461増えました。厚生労働省は「見直しの意図と異なる形で高い報酬区分の事業者が増えた」として、2026年6月から区分の基準額を3千円引き上げています。(注5)
B型が儲からなくなった、という話ではありません。過去の収支差率や報酬区分の分布が、そのまま続く前提では計画を立てられない、ということです。
新規参入する側には、生産活動の根拠まで問われるようになった
| 時期 | 変わったこと |
|---|---|
| 2025年10月 | 就労選択支援が始まり、B型を新たに使う人は原則として事前にアセスメントを受ける |
| 2025年11月 | 国が新規指定と運営指導のガイドラインを自治体に示す |
| 2026年6月 | 新規指定の事業所の基本報酬が1.6%低くなる。工賃の区分の基準も上がる |
ガイドラインは法令ではなく、国から自治体への技術的な助言です。審査の進め方は自治体によって違います。そのうえで、事業計画書と収支予算書で次の点を確認するよう求めています。(注6)
- 生産活動として何をするか、取引先はどこか(1社だけに頼っていないか)
- 想定する収入の根拠(受注単価・数量)と、利用者がどの程度作業に就けるか
- その収入で工賃を払えるか(工賃は給付費で補えない)
- 開始から2〜3年の計画
面談は、コンサルティング会社や代理人ではなく、法人の代表者・管理者・サービス管理責任者に行うことも挙げています。また、新規指定からおおむね6か月を目途に運営指導を行い、生産活動や会計の実態を確認するよう自治体に求めています。
いまB型を始めるなら、生産活動を「事業」として組めるか
B型は、福祉サービスとしての支援と、利用者と一緒に行う生産活動の2つを同時に組み立てる事業です。報酬は支援に対して払われ、工賃は生産活動の収入から必要な経費を引いた額で払います。(注7)
財務省の調査では、令和5年度に生産活動の収支で工賃を賄えていなかった事業所が18.7%ありました。報酬も生産活動の結果と結びついています。定員20人以下・職員配置6:1の場合、平均工賃4万8千円以上の区分は1日837単位、1万円未満の区分は590単位です。これは従前の基本報酬で、2026年6月以降に新規指定を受ける事業所には、原則としてさらに1.6%の引き下げが適用されます。(注8)
国の「優良事業所の取組事例」には、単価の高いハウスクリーニングの受託を営業で広げ、平均工賃を令和元年度の8,150円から令和5年度の36,734円に上げた事業所などが載っています。何を、誰に、いくらで、どれだけ売るかを組み立て直した例です。(注9)
新しい事業所が何年で黒字になるかは、公表データでは分からない
開業したB型が何年で、どのくらいの割合で黒字になるかを示す公的データは見当たりません。廃止や休止の全国集計も確認できませんでした。就労選択支援で利用者の流れがどう変わったかも、まだ分かりません。「いまからでも成り立つ」とも「もう成り立たない」とも、データからは言い切れません。
開業前の確認リスト
- 生産活動として何をし、誰から、いくらで、どれだけの仕事を受ける(売る)か
- 経費を引いたあとに工賃を払えるか。その工賃は2026年6月以降の基準でどの報酬区分か
- 過去の収支差率や区分の分布ではなく、新規指定の基本報酬と新しい基準で計画しているか
- 利用者はどこから来るか(就労選択支援、相談支援事業所など)
- この事業の組み立てを、法人の代表者や管理者が自分の言葉で説明できるか
B型は「指定を取れるか」から「生産活動を事業として組めるか」へ
B型への需要は続いており、生産活動を事業として組み、工賃を上げている事業所もあります。2026年のいま、参入しやすいかどうかは事業所数や過去の収益では測れません。工賃を払える生産活動を組み、続けられるかが問われています。
注と出典
- 利用者数・事業所数の推移:財務省「令和6年度予算執行調査」総括調査票(16)障害福祉サービス等(PDF)
- 新規事業所は障害福祉サービスデータベースの事業所台帳で「新規」登録された数、年度末の事業所数は国保連の請求事業所数で、出どころと定義が違う。令和3年度の営利法人の割合は件数(990/1,521)から計算。第52回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料1 p.27(2026年1月22日、PDF)
- 注1と同じ。4時間未満の各区分を事業所数で加重平均した値ではない。2024年4月の改定で、参加をもって一律に評価する報酬体系には短時間利用の減算がすでに入っている
- 令和6年度工賃(賃金)の実績について(PDF)。令和5年度は当初23,053円と公表され、2026年3月に22,649円へ訂正された
- 第47回報酬改定検討チーム 資料3(2025年6月25日、PDF)、令和8年度報酬改定における改定事項(PDF)。令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は対象外
- 指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン(2025年11月28日)。新規指定後おおむね6か月の運営指導はガイドライン本文(PDF)。就労選択支援のアセスメントは、50歳以上の人、障害基礎年金1級の人などは不要。就労選択支援の取扱い(PDF)
- 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov法令検索) 第201条
- 注5の改定事項。1単位は原則10円で、地域・定員・職員配置で変わる
- 優良事業所の取組事例(PDF)
更新日:2026年10月16日 執筆:行政書士 大塚栄一

