放課後等デイサービスは、いまも開業しやすいのか。伸びた需要と、変わった支援と報酬

放課後等デイサービス(放デイ)の開業情報では、資格がなくても始められる、未経験でも開業できる、収入の大半が公費なので安定している、という説明がよく並びます。放課後に子どもを預かるサービス、という分かりやすいイメージもあります。こうした説明には数字の裏づけもあったのか、2026年のいまも当てはまるのかを、一次資料で確かめます。

この記事の要点

  • 子どもの数が減るなかで、放デイの利用と事業所は増え、新規参入は年2,500か所を超えて続いた
  • 収入の93.1%は給付費等、収支差率は9.1%。それでも回答事業所の45.4%は赤字だった
  • 国が問題にしてきたのは「預かり」ではなく「発達支援のない、預かりに偏った支援」
  • 2024年から支援の中身と時間が運営基準と報酬に入り、2026年6月には新規指定の基本報酬が下がった

子どもが減るなかでも、利用と事業所は増え続けた

令和6年度の放デイの総費用額は6,098億円で、前年度から14.9%増えました。事業所台帳で「新規」と登録された放デイは、令和3〜6年度に毎年2,559〜2,738か所あります。年度末の事業所数は、令和3年度の17,971から令和6年度の22,859に増えました。(注1)

この10年で、義務教育段階の児童生徒は約9%減り、特別支援学級の在籍者は約2.1倍になりました。同じ時期に動いた数字ですが、特別支援学級の増加が放デイの利用を増やしたかどうかは、公表資料では確かめられません。(注2)

「給付で安定」には数字の背景がある。それでも半数近くは赤字

令和6年度決算で、放デイの1事業所当たりの収入の93.1%は給付費等(自立支援費等・措置費・運営費収益)でした。収支差率は9.1%で、障害福祉全体の6.5%を上回ります。一方で、回答した放デイの45.4%は赤字でした。収支差率も、決算年度によって5.8〜10.7%の幅で動いてきました。(注3)

「需要がある」「給付で収入を見込みやすい」という説明と矛盾する数字ではありません。ただし、個々の事業所が安定して利益を出せることを示すものでもありません。

中心は子ども本人への発達支援。問題にされたのは「預かりに偏った支援」

児童福祉法は放デイを、学校に通う障害のある子どもに、放課後や休業日に生活能力の向上などの支援を行うサービスと定めています。2015年のガイドラインは、学校や家庭とは違う時間・空間・人・体験を通じた発達支援を基本の役割としました。(注4)

預かりそのものも、制度の中に位置づけがあります。同じガイドラインは、保護者の時間を保障するためにケアを一時的に代行することを保護者支援の一つに挙げ、2023年の国の検討会報告書も、総合的な支援を前提に預かり的な支援をあわせて行う、と整理しています。

国の資料に繰り返し出てくるのは、発達支援がないまま預かりだけになっていることや、学習塾・習い事と同じ内容だけを公費で行っていることへの懸念です。何割の事業所が当てはまるかを示す集計はありません。(注5)

2024年から、「何を、何時間支援するか」が運営基準と報酬に入った

時期変わったこと
2024年4月5領域(健康・生活/運動・感覚/認知・行動/言語・コミュニケーション/人間関係・社会性)を含む総合的な支援が運営基準に。個別支援計画で5領域とのつながりを示す
2024年4月基本報酬が、個別支援計画に定めた支援時間に応じた区分に。30分未満は原則算定しない
2024年4月平日3時間・休業日5時間を超える支援は、預かりニーズに対応した延長支援加算で評価
2025年4月支援プログラムを公表していない事業所は基本報酬を減算
2026年6月新規指定の事業所の基本報酬が1.8%低くなる(令和9年度改定まで)

「発達支援を前提に、預かり的な支援をあわせて行う」という整理が、報酬の仕組みとして形になったと言えます。(注6)

2026年6月の見直しでは、国は対象を「収支差率が高く、かつ、事業所が急増しているサービス類型」としました。放デイについては、令和6年度の収支差率9.1%と、年6〜11%台で続いた事業所数の伸びが根拠です。国は収支差率の高さが急増を招いたとは述べておらず、2つを並べて対象を選んでいます。重症心身障害児、医療的ケア、強度行動障害などへの支援や、自治体が必要として設置する事業所などには配慮措置があります。(注7)

開業情報の5つの説明は、2026年にどこまで当てはまるか

よくある説明確かめた事実2026年に新しく始めるなら
需要が伸びている全国の利用と事業所は増えてきた全国の伸びは、開業する地域の需要を示さない
資格がなくても開業できる代表者個人に資格要件はない。ただし法人として指定を受け、人員・設備・運営の基準を満たす必要がある児童発達支援管理責任者や児童指導員・保育士などの配置が必要
未経験でも開業できる開業そのものはできる支援の中身を計画とプログラムで示し、公表することが求められる
給付で安定している収入の93.1%が給付費等事業所ごとの収支は分かれ、新規指定は単価が低い
子どもを預かるサービス預かりは制度に位置づけがある発達支援が前提で、預かり的な時間は分けて評価される

新規参入の動機や、新しい事業所の収支は、公表データでは分からない

収支差率の高さが新規参入を増やしたのか、2024年以降の見直しで参入や廃止がどう変わったのかは、まだ公表データで確認できません。新しく開業した事業所の収支を示す公的データもありません。

開業前の確認リスト

  • どんな子どもを対象にするか(年齢、障害の特性、医療的ケアや行動面の支援)。配慮措置に当たるか
  • 開業する地域の需要を確かめたか(周辺の事業所、自治体の障害児福祉計画の見込量)
  • 5領域を踏まえた支援を、どんな活動で行い、計画とプログラムで示せるか
  • 学校の終業時刻、送迎、長期休暇を踏まえて、平日と休業日の支援時間をどう組むか
  • 収支を既存事業所の平均ではなく、新規指定の単価と自分の利用見込みで立てたか
  • 児童発達支援管理責任者、児童指導員・保育士、専門職を確保できるか

放デイは「何時間預かれるか」から「どんな子どもに、どんな支援をするか」へ

放デイの始めやすさを支えてきた説明は、過去の数字と照らすと根拠のないものではありませんでした。2026年のいまは、どんな子どもに、どんな支援を、どんな体制で行うかを具体的にし、それを現在の運営基準と報酬に当てはめて初めて、開業の判断材料がそろいます。利用は伸び続けています。その中で、支援の中身で選ばれる事業所をどう組み立てるかが、これからの開業の出発点になります。

ご相談について

対象とする子どもと支援の組み立て、人員配置、指定申請の書類を一緒に整えます。

注と出典

  1. 総費用額:障害福祉サービス等の費用の状況について(2025年10月、PDF)。新規事業所と年度末の事業所数:第52回報酬改定検討チーム 資料1 p.29(PDF)。新規は事業所台帳、年度末は国保連の請求事業所数で、定義が違う。両者の差を廃止数として扱うことはできない
  2. 文部科学省「特別支援教育の現状に関する基礎資料」p.5(2026年1月7日、PDF)。平成26年度と令和6年度の比較
  3. 令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果(第48回報酬改定検討チーム 資料5、PDF)。304事業所、有効回答率40.0%。収支差率は物価高騰対策関連補助金を含まない。過去の値は調査ごとに対象が違う
  4. 放課後等デイサービスガイドライン(2015年4月、PDF)、障害児通所支援に関する検討会報告書(2023年3月、PDF) p.14〜15
  5. 障害者部会 第85回 資料6(2017年6月、PDF)、障害児通所支援の在り方に関する検討会 第3回 資料6(2021年7月、PDF)。どちらも該当する事業所の割合を示すデータではない
  6. 令和6年度報酬改定における主な改定内容(障害児関係)(PDF)、放課後等デイサービスガイドライン(2024年7月、PDF)。延長支援加算は職員2名以上の配置が要件
  7. 令和8年度報酬改定における改定事項(PDF) p.19・p.23、第51回報酬改定検討チーム 資料1(PDF) p.7。伸び率は令和3→4年度11.39%、4→5年度8.58%、5→6年度6.85%で、注1の年度末事業所数から計算した伸びとは集計の基準が違う

更新日:2026年10月16日 執筆:行政書士 大塚栄一