生活介護は、障害福祉サービスの中で最も大きな市場です。既存の通所型の事業所の収支差率は9.7%と高く、2026年6月の新規指定の報酬引き下げの対象にもなりませんでした。
一方で、利用者数はこの数年ほとんど増えていません。この二つの数字を、開業の判断にどう使えばよいのか。国の調査と報酬の仕組みから整理します。
この記事の要点
- 総費用は約9,085億円で最大。ただし4年間で利用者数は約4%しか増えていない
- 通所型の収支差率9.7%は既存事業所の平均。開設したばかりの事業所の収支は公表されていない
- 基本報酬は支援時間で大きく変わる。5時間台と6時間台で単価は約4割違う
- 採算は、支援時間・障害支援区分・定員・利用者数の組み合わせで決まる
最大の市場だが、利用者はほとんど増えていない
2024年度の生活介護の総費用は約9,085億円で、障害福祉サービスの中で最も大きい規模です。ただし前年度からの伸びは5.6%で、就労継続支援B型の20.1%を大きく下回ります。この総費用には、入所施設で日中に行う生活介護も含まれます。(注3)
| 2021年4〜6月 → 2025年4〜6月 | 生活介護 | B型 |
|---|---|---|
| 事業所数の伸び | 約12%(11,702 → 13,079か所) | 約34% |
| 利用者数の伸び | 約4%(約29.5万 → 約30.8万人) | 約37% |
2025年の前年比は、事業所数が1.8%、利用者数が0.8%でした。1事業所あたりの利用者数は約25.2人から約23.5人に減っています。(注4)
ここでの事業所数は報酬を請求している事業所の数で、新規指定と廃止の件数は分かりません。この数字だけで「新規参入が少ない」とは言えません。
報酬引き下げの対象外になった理由
2026年6月の引き下げは、①総費用全体に占める割合が1%以上、②2024年度の収支差率が5%以上、③事業所数の伸び率が過去3年間5%以上、の3つを満たすサービスが対象でした。生活介護は①と②を満たしますが、事業所数の伸びは毎年5%を下回っています。(注1)
収支差率9.7%は、既存事業所の平均
国の2025年の経営概況調査では、2024年度決算の生活介護の収支差率は6.3%。このうち通所型は9.7%で、全サービスの加重平均6.5%より高い水準です。収入に占める給与費の割合は通所型で67.8%、赤字の事業所の割合は生活介護全体で31.0%でした。(注5)
ただし、調査は開設年数別や稼働率別の集計を公表しておらず、開設したばかりの事業所の収支は分かりません。1事業所あたりの年間収入約7,939万円・平均定員28人も、入所施設で行うものを含む既存事業所の平均です。(注6)平均の9.7%を、自分の事業計画の見込みとしてそのまま使うことはできません。
報酬は「何時間支援するか」で大きく変わる
2024年度の改定で、生活介護の基本報酬は、障害支援区分と定員に加えて、支援時間の7つの区分でも決まるようになりました。時間は個別支援計画に定めた標準的な時間で算定し、送迎の時間は原則として含みません。(注7)(注8)
| 定員11〜20人・区分6(1日) | 基本報酬 |
|---|---|
| 5時間以上6時間未満 | 904単位 |
| 6時間以上7時間未満 | 1,258単位(5時間台より約39%高い) |
| 7時間以上8時間未満 | 1,291単位(6時間台より約2.6%高い) |
開所時間から送迎の時間を除いて、どれだけの支援時間を組めるかが収入を左右します。ただし計画上の時間は、利用者の状態と必要な支援で決めるものです。単価の高い区分に合わせて形式的に時間を延ばせばよい、というものではありません。
採算を決める4つの条件
- 障害支援区分:6時間台・定員11〜20人で、区分6は1,258単位、区分3は583単位、区分2以下は532単位。一方、必要な職員数は利用者の平均区分で変わり、平均4未満なら6:1、4以上5未満なら5:1、5以上なら3:1。看護職員は1人以上(注7)(注9)
- 定員:小規模ほど1日の単価が高い。区分6・6時間台で、定員6〜10人は1,580単位、11〜20人は1,258単位(注7)
- 支援時間:5時間台と6時間台の差が大きい(上の表)
- 開設直後の利用者数:開設から6か月未満は、定員の90%を利用者数とみなして職員を置く。支援時間が5時間未満の人は2分の1人、5時間以上7時間未満の人は4分の3人として数える(注10)
重い障害の人を受け入れるほど単価は上がりますが、人件費も増えます。報酬は利用した日ごとに入る一方、職員は利用者が集まる前から定員に近い前提でそろえる必要があります。
開業前の確認リスト
全国の利用者数が横ばいに近くても、地域や支援の内容によっては受け入れ先が足りない可能性があります。全国の数字ではそこまで分からないため、次の点を具体的に確かめます。
- 開業予定地の市町村の障害福祉計画で、生活介護の見込み量と実績がどうなっているか
- 地域の特別支援学校の卒業生の進路と、既存の事業所の受け入れの余裕
- 想定する利用者の障害支援区分と、必要な支援時間
- その前提で必要な職員数と、利用者がそろうまでの人件費
生活介護の開設を検討している方へ
想定する利用者の障害支援区分と支援時間から、必要な職員数と収支の見込みを、事前相談の前に一緒に整理します。
出典
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(2026年2月18日) p.19
- 障害者総合支援法 第5条第7項(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「令和8年度における臨時応急的な見直し」(2026年1月22日) p.34
- 厚生労働省「障害福祉サービス等の最近の動向(令和7年6月まで)」 p.20〜21・36〜37。国保連データ。伸び率と1事業所あたり利用者数は筆者計算
- 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要」 p.1・3・6
- 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」 第7表 生活介護
- 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(2026年度見直し反映版) p.7〜8。時間区分の導入は「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」 p.21
- 横浜市「生活介護サービス費 基本報酬算定の考え方について(令和6年9月時点)」。送迎時間の例外も記載
- 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第78条(e-Gov法令検索)
- 同基準の解釈通知(平成18年12月6日障発第1206001号) 第二の2(5)②
更新日:2026年10月17日 執筆:行政書士 大塚栄一

