総量規制で、障害福祉は開業しづらくなるのか。先に答えを書くと、総量規制が行われる地域・サービスでは、原則として新規指定や定員増が制限されます。例外は自治体によって異なります。国も2025年から活用を促しています。ただし、全国一律に開業を止める制度ではありません。対象のサービス、区域、期間、例外は、自治体ごとに違います。
この記事の要点
- 計画の必要量に達していれば、自治体は新規指定も定員増も「しないことができる」
- 国は2025年から活用を促し、2027年4月からグループホームも対象に加わる
- 規制するかどうかは自治体の裁量。対象は一部のサービスで、運用も自治体ごとに違う
- 同じ計画と公表資料は、どこで何が足りないかも示している
規制される地域・サービスでは、原則として新規指定も定員増も制限される
障害者総合支援法は、サービスの量が都道府県の障害福祉計画の必要量に既に達している場合などに、自治体が「指定をしないことができる」と定めています。児童発達支援と放課後等デイサービスにも、児童福祉法に同じ規定があります。定員を増やす指定の変更にも準用されるので、すでに運営している事業所の定員増も止まりえます。(注1)
| 時期 | 動き | 状況 |
|---|---|---|
| 2024年4月 | 市町村が都道府県の指定に意見を出し、都道府県が指定に条件を付けられる | 施行済み |
| 2025年11月 | 財務省が「総量規制の積極活用」を求める | 審議会資料(案) |
| 2025年12月 | 利用者割合の多い市町村に、見込量の伸びを全国平均にとどめることと、総量規制の活用を要請する案 | 合同部会の案 |
| 2026年6月 | 指定のガイドライン:事前確認の面談を推奨。相手は代理人ではなく法人の代表者・管理者など | 通知済み |
| 2026年6月 | B型・GH・児童発達支援・放デイの新規指定の基本報酬を引き下げ | 施行済み |
| 2027年4月 | 新しい基本指針に、総量規制の活用の要請が入る。共同生活援助(GH)が総量規制の対象に | 決定済み |
(注2)
「開業しづらくなる」という懸念には、根拠があります。
ただし、全国一律に開業を止める制度ではない
規制するかどうかは、自治体の裁量で決まる。 条文は「指定をしてはならない」ではなく「しないことができる」で、国のガイドラインも裁量は指定権者にあるとしています。GHも、2027年4月から規制が「できるようになる」のであって、全国の新規指定が一斉に止まるわけではありません。(注3)
対象は一部のサービスに限られる。
| 総量規制の対象 | 対象外 |
|---|---|
| 生活介護、就労継続支援A型・B型、障害者支援施設、児童発達支援、放課後等デイサービス、障害児入所施設、共同生活援助(2027年4月から) | 居宅介護などの訪問系、就労移行支援、相談支援 など |
実施していた自治体は少なかった。 2024年11月の調査では、回答した指定権限を持つ146自治体のうち、B型で総量規制を実施していたのは8.9%でした。2025年以降の活用促進より前の数字です。(注4)
規制の中身は、自治体ごとに違う
大阪市は、B型の2026年度の見込量334,047日/月に対し、供給量が519,087日/月(事業所1,079か所)に達しているとして、新規指定は2026年8月指定分から、定員の追加は同年7月変更分から、それぞれ1年間制限しています。解除するかは毎年検証するとしています。(注5)
| 運用の違い | 例 |
|---|---|
| 区域の切り方 | 京都市はB型を市内5圏域ごとに比べ、全圏域で規制(2025年11月〜2028年3月) |
| 例外の置き方 | 奈良市は強度行動障害・重症心身障害・医療的ケアの人を対象とする場合などを例外に。熊本市は重症心身障害児を主に受け入れる児童発達支援・放デイなどを対象外に |
| 定員増の扱い | 京都市は多機能型の定員の内訳変更や、他圏域からの移転も対象に |
| 解除 | 宮崎市は2026年度に生活介護の規制を解除(計画値を超えれば再規制あり) |
京都市はB型を規制する一方で、児童発達支援と放デイは、足りない区・支所で事業者を公募しています。総量規制は需要がないことを示す制度ではなく、計画の見込量と供給の釣り合いを見る制度です。ただし公募は選考で、足りない区域や支援なら自動的に指定されるわけではありません。(注6)
横浜市については、総量規制の実施を公表した資料は、2026年10月16日時点で確認できませんでした。開業前には、市の指定担当への確認が必要です。
開業前に確かめたい4つのこと
- 開業予定地で規制しているか:指定権者が都道府県か市かを確かめ、そのサービスで規制・予告・次の計画での検討があるか
- 計画の見込量と供給量:自治体が公表する供給量と算定方法。自分で集めた定員の合計は、行政の供給量と一致するとは限らない(大阪市は定員×日数で算出)
- 例外や公募の対象になるか:対象かどうかは自治体の要件次第
- 将来の定員増と指定の更新:規制が始まると定員を増やせなくなる可能性。更新への準用は法律上あるが、扱いは自治体に確認
見込量は行政計画上の見込みで、自分の事業所に来る利用者の数を示すものではありません。見込量を下回るから集まる、上回るから集まらない、とは読めません。GHを考えている場合は、2027年4月の施行日前後の扱いを指定権者に確かめてください。施行前の申請を除外する経過措置は置かれていません。(注7)
総量規制は、どこで何が求められているかを確かめる入口になる
「総量規制で開業できなくなる」という一言には、どの地域の、どのサービスの、いつの話かが抜けています。開業しづらくなる地域・サービスはありますが、同じ計画と公表資料は、どの区域でどんな支援が足りていないかも示しています。調べたうえで組み立てた計画で指定を受け、続けていけるか。その確認が、事業の設計の出発点になります。
注と出典
- 障害者総合支援法(e-Gov法令検索) 第36条第5項・第37条第2項、児童福祉法(e-Gov法令検索) 第21条の5の15第5項
- 障害者総合支援法第36条第6項〜第8項、財政制度分科会(2025年11月11日)資料3、障害者部会・障害児支援部会 合同会議(2025年12月8日)資料2、指定のガイドライン(2026年6月、PDF) p.4〜5、令和8年度報酬改定における改定事項(PDF)、第8期障害福祉計画について(基本指針)、障害者総合支援法施行規則の一部を改正する命令(令和8年内閣府・厚生労働省令第2号)。合同部会の257市町村は案の数で、該当する市町村はサービスごとに違う。就労系では、市区町村へのニーズ確認と議事録の提出を求める案も出ている(第64回報酬改定検討チーム、2026年9月28日)
- 注2の指定のガイドライン p.21・p.30
- 令和6年度障害者総合福祉推進事業 報告書(2025年3月、PDF) p.49
- 大阪市「障がい福祉サービスに係る総量規制の実施について」(2026年3月31日)。供給量は2025年12月時点の定員に原則23日/月を掛けた値
- 京都市・B型の総量規制、京都市・放デイの公募、奈良市、熊本市、札幌市、宮崎市。確認時点は2026年10月
- 注2の基本指針、障害者総合支援法施行規則(e-Gov法令検索)
更新日:2026年10月16日 執筆:行政書士 大塚栄一

