横浜市でグループホームを開設する前に。市が求めているのは、どんな住まいか

横浜市では、グループホーム(共同生活援助)の利用が増える見込みです。

障害者プラン素案では、6,295人から7,000人へ。およそ1割の増加 です。

利用が増えるなら、グループホームを開けばよい。

そう考えたくなりますが、計画を内訳まで読むと、市が見ているのは数だけではありませんでした。

この記事のポイント

  • 横浜市では、グループホームの利用が今後も増える見込み
  • 全体の増加以上に、手厚い支援が必要な人への対応が課題になっている
  • 市は2〜3名定員の小さなホームに、新しい目標と補助を設けた
  • 開設を考えるなら、物件より先に「誰の住まいをつくるのか」を決める

数が増えても、重度の人の居場所が増えるとは限らない

グループホームは、入所施設や病院から地域へ移る人の住まいとして増えてきました。

国の報告書(社会保障審議会障害者部会、令和4年6月)は、制度ができたころは主に中軽度の人を想定していたと振り返っています。

その後、入居者の重度化・高齢化が進みました。報告書は、重度の人を受け入れる体制づくりを課題に挙げています。

あわせて、障害福祉の経験が少ない事業者の参入が目立ち、支援の質が下がることへの懸念も書かれています。

強度行動障害については、国の検討会の報告書(令和5年3月)がグループホームを取り上げています。

  • 少人数の暮らしなので、一人ひとりに合わせやすい
  • 一方、少ない職員で支えるため、状態が悪化したときに応援を得にくく、職員の負担も大きい

報告書は、専門的な知識を持つ人材を含むチームで支えることが重要だとしています。

横浜市の計画を内訳まで読む

素案89ページの計画値を、内訳で見ます。

対象令和7年度 → 令和11年度
利用人数全体6,295人 → 7,000人(約1割増)
強度行動障害のある人1,428人 → 1,925人(約35%増)
医療的ケアが必要な人179人 → 200人

※集計単位は、全体が「人/年」、強度行動障害と医療的ケアが「人/月」で異なります。

全体は1割、強度行動障害のある人は3割半。

増え方が違います。

88ページには、新しい取り組みが書かれています。

強度行動障害や医療的ケアのある人など、少人数での暮らしが望ましい人のための、2〜3名定員の小さなグループホーム。

令和14年度までに、延べ 10か所 を設ける目標です。

予算も、すでに動いている

市の令和8年度予算では、この2〜3名定員のグループホームに、家賃や人件費などの一部を新たに補助します。

市内の今の姿と並べると、この意味が見えてきます。

  • 市の一覧(2026年3月末)にある住居は 1,015
  • 定員は4〜10人で、5人と6人の住居が6割
  • 市の運営費補助も、定員4〜10人のホームを対象にしてきた

2〜3名の住居に家賃や人件費の補助を付けるのは、市の仕組みでは新しい形です。

市がそう宣言しているわけではありません。

それでも、計画の内訳と新しい目標、新しい補助を並べると、市は「数を増やす」から「支援の必要度が高い人の住まいをどう確保するか」へ、重心を移しつつあると読めます。

「2〜3名なら小さく始められる」ではない

2〜3名と聞くと、小さな物件で身軽に始められる事業に見えるかもしれません。

けれども市が想定しているのは、手厚い支援が必要な人の住まいです。

小規模だから始めやすい、とは考えにくいと思います。開設前に設計することが、むしろ多くあります。

  • 誰を受け入れるのか。障害の特性と、必要な支援の程度
  • 夜間を含めて、どんな人員配置にするのか
  • 強度行動障害などに対応できる職員を、どう確保し、育てるのか
  • 音や動線、居室の配置など、その人に合う住環境をどうつくるのか
  • 医療機関、相談支援、日中の活動先とどうつながるのか
  • 少ない人数で、報酬・加算・市の補助を合わせて経営が成り立つのか

最後の点は、国の検討会でも話題になっています。

強度行動障害のある人のグループホームは、少ない入居者に手厚く職員を配置することが多い。そのため収支は非常に厳しいところが多いのではないか。

こうした指摘が、構成員から出ています(令和4年12月、第4回)。

国の結論ではなく、議論の中で出た指摘です。それでも、少人数で手厚く支える住まいを考えるうえで、見過ごせない点です。

市の新しい補助の具体的な要件は、市に確認して事業計画に入れることになります。

グループホームは「誰の住まいか」から決まる

開設を考えると、まず物件を探したくなります。

けれども、考える順番はその逆です。

誰の住まいか → 定員 → 建物の条件 → 夜間の体制と職員の経験

たとえば強度行動障害のある人を受け入れるなら。

刺激の少ない居室や動線、夜間に状態が崩れたときの応援体制、外部の専門職に相談できる関係。物件を決める前に考えることがいくつもあります。

物件から始めると、その建物で受け入れられる人に合わせて事業が決まってしまいます。

市全体の利用が増えることと、自分がつくる住まいが必要とされることは、別の問題です。

「横浜でグループホームは足りているか」ではなく、

「自分は誰の住まいをつくるのか。その人を支える体制を用意できるか」。

開設の検討は、この問いから始まると思います。

横浜市でグループホームの開設を検討している方へ

対象となる人、人員配置、物件の条件を整理し、市の担当に確かめることを一緒にまとめます。

出典

更新日:2026年10月14日 執筆:行政書士 大塚栄一