新規開業だと報酬が下がるのか。2026年6月からの「新規指定」の報酬と対象4サービス

「報酬は公定価格だから、いつ開業しても単価は同じ」。この前提は、2026年6月から4つのサービスで変わりました。新しく指定を受けた事業所には、既存の事業所より低い「応急的な報酬単価」が原則として使われます。令和9年度の報酬改定までの措置です。

この記事の要点

  • 対象はB型、グループホーム(2類型)、児童発達支援、放課後等デイサービス。基本報酬が1.2〜2.8%低い
  • 収支差率5%以上と、事業所数の3年連続5%以上の伸びが重なったサービスが選ばれた
  • 定員増や住居の追加は対象外。A型からB型への変更は対象。承継は実質で分かれる
  • 既存事業所の収支は、自分の単価に置き換えてから使う

対象の4サービスは、基本報酬が1.2〜2.8%低くなる

2026年2月18日にまとまった令和8年度の報酬改定で、新規指定の事業所の基本報酬が臨時応急的に引き下げられました。施行は2026年6月1日です。(注1)

サービス新規指定の基本報酬引き下げ幅
就労継続支援B型従前の1000分の9841.6%
共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)従前の1000分の9722.8%
放課後等デイサービス従前の1000分の9821.8%
児童発達支援従前の1000分の9881.2%

既存の事業所は従前の単価のままです。同じ地域で同じ利用実績でも、指定の時期で基本報酬が変わります。グループホームの外部サービス利用型は対象外です。(注2)

選ばれたのは、「収支差率」と「事業所の急増」が重なったサービス

国は対象を、次の3つが重なるサービスとしています。

  1. 年間の総費用額の1%以上を占める
  2. 令和6年度の収支差率が5%以上
  3. 事業所数が過去3年間、5%以上の伸びを続けている

検討チームの資料の数値を当てはめると、生活介護とA型は収支差率は5%を超えていても事業所数の伸びが足りず、短期入所は事業所数が伸びていても収支差率が2.3%です。片方だけでは対象になっていません。(注3)

理由について、国のQ&Aは「過度な新規参入を抑制することも必要」と説明しています。収支差率の高さと事業所の増え方は、開業情報では「始めやすさ」の根拠に使われますが、今回は報酬を見直す条件になりました。

定員増や住居の追加は対象外。承継は「実質的な継続」で分かれる

既存の法人が事業所を広げる場合などの扱いは、国のQ&Aに示されています。(注4)

場合応急的な報酬単価
定員の増加、従たる事業所・単位の追加、GHの住居(サテライト型を含む)の追加対象外(問13)
A型からB型への変更(新たな指定が必要)対象(問14)
GHの類型変更(届出で足りる)対象外(問14)
既存の事業所に多機能型でサービスを加える加えたサービスだけ対象(問17)
合併・分割・事業譲渡で、前後の実質的な継続が認められる既存事業所と同じ扱い(改定事項、問12)

形式上、指定を受け直すかどうかだけでは決まりません。判断するのは指定権者なので、最後は指定権者への確認が必要です。承継によって従前の報酬単価が適用される場合でも、利用状況や職員体制、収支の見通しは別に確認する必要があります。

重度の方への支援、離島・中山間地域、自治体が求める事業所は、従前の単価になりうる

国は、受入れニーズが特に高い支援や、サービスが足りない地域に配慮して、次の場合に従前の単価を当てています。(注4)

  • 重度障害児者への支援:医療的ケアや強度行動障害への支援など、定められた加算等を算定した月。ただし、従前の単価が適用される範囲は、加算等の種類によって利用者単位と事業所単位に分かれます(問8〜10)
  • 離島・中山間地域:居宅介護等の特別地域加算の対象地域(問7、問22)
  • 自治体が必要と認めて設置する事業所:公募や設置のための補助など。運営費や人材確保の補助は当たらない(問24)

どれも、誰にどこでどんな支援をするかという、事業の中身にかかわる条件です。単価の差を避けるために選ぶものではありません。

既存事業所の収支は、新規指定の単価に置き換えてから使う

従前の単価なら基本報酬が月100万円になる利用実績なら、新規指定ではB型98.4万円、グループホーム97.2万円、放課後等デイサービス98.2万円、児童発達支援98.8万円です。加算・減算や地域差は考えない単純な換算です。処遇改善加算も、算定の基礎が下がる分だけ小さくなります。(注5)

差の大きさより大事なのは、参考にする数字がどの単価の結果かということです。令和6年度決算の経営概況調査は、今回の改定前の実績です。2026年6月にはB型の基本報酬区分の基準も見直されています。事業計画では、最新の報酬表で単価や加算を確かめたうえで、新規指定の特例を反映します。

令和9年度の改定後の扱いは、まだ決まっていない

国は「令和9年度報酬改定までの間」の措置とし、その後は改めて議論するとしています。この見直しで新規指定がどれだけ減ったかを示す公表データは、更新日の時点では確認できていません。

開業前の確認リスト

  • 予定しているサービスは対象か
  • 事業計画は最新の報酬表をもとに、新規指定の単価と処遇改善加算への影響を入れたか
  • 新規指定・拡張・承継のどれに当たるか、指定権者に確かめたか
  • 配慮措置の対象になるなら、その要件を満たせるか
  • 令和9年度以降の単価を確定事項として扱っていないか

引き下げ幅は1.2〜2.8%で、この差だけで事業が成り立つかどうかが決まるわけではありません。既存事業所の実績は大事な材料なので、自分に当てはまる単価に置き換えて使えば、計画の根拠になります。

ご相談について

新規指定に当たるかどうか、配慮措置の要件を満たせるかを、指定権者への確認も含めて一緒に整理します。

注と出典

  1. 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(2026年2月18日、PDF)。対象は基本報酬で、引き下げ幅は「一定の収支差率を確保できる水準」としてサービスごとに設定
  2. 日中サービス支援型に併設が必要な短期入所も対象外(Q&A VOL.1 問15)
  3. 第51回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料1(2025年12月16日、PDF)。「過去3年間」の期間は資料に明記がないため、令和3→4年度から令和5→6年度の3期間で当てはめた。事業所数は国保連データで、社会福祉施設等調査とは一致しない
  4. 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(2026年3月31日、PDF)、同VOL.2(2026年7月13日、PDF)。多機能型からの分離も新設分割に当たれば同じ扱い(VOL.2 問1)。移転そのものの扱いはQ&Aに明記がない
  5. 処遇改善加算は「処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数」に加算率を掛ける(改定事項)。令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号(PDF)。改定の全体は令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について

更新日:2026年10月16日 執筆:行政書士 大塚栄一