横浜市では、就労継続支援B型の利用が増え続ける見込みです。
市の障害者プラン素案では、6,735人分から9,460人分へ。約4割の増加 です。
開業を考える人には、心強い数字に見えます。
ただ、これは市全体を一つのかたまりとして見た数字です。
市内のB型は、どこも同じように利用されているのか。市と県の公開データを突き合わせて、事業所ごとに並べてみました。
この記事のポイント
- 横浜市内のB型は316事業所。新しい指定も続いている
- 190事業所の利用率は、中央値0.80。ただし幅が大きい
- 市全体の利用が増えても、自分の事業所に人が集まるとは限らない
- B型は、利用者の確保と生産活動を同時に成り立たせる事業
横浜市内のB型は316事業所
市の事業所一覧(2026年4月)で数えると、市内のB型は 316事業所。定員の合計は6,394人です。
直近およそ1年の新規指定は39件。ほとんどが営利法人による開設でした。
これから始める事業所は、すでに316の事業所がある場に加わることになります。
ここからは、「これだけあれば競争が厳しい」とも、「4割増えるならまだ入れる」とも読めてしまいます。
どちらも市全体の話です。開業して向き合うのは、自分の事業所ひとつです。
190事業所を並べると
神奈川県は、B型の工賃実績を事業所ごとに公表しています。そこには1日の平均利用者数も載っています。
これを市の一覧と照らし合わせ、令和6年度に通年で開いていた190事業所について、1日の平均利用者数 ÷ 定員 を出しました。
中央値は 0.80。
定員20人なら、1日に平均16人が通っている計算です。
ただ、意味があるのは中央値よりも幅のほうでした。
| 利用率 | 事業所数 |
|---|---|
| 0.9以上 | 58 |
| 0.5以上0.9未満 | 109 |
| 0.5未満 | 23 |
定員20人の事業所に置き換えると、こうなります。
- 1日に18人以上が通う事業所:58
- 10人に届かない事業所:23
同じ市内の同じサービスでも、日々の風景はずいぶん違うはずです。
※工賃実績は令和6年度、定員は市の一覧(2026年4月)の値で、時点は完全にはそろっていません。事業所名で照合できた範囲の数字で、年度途中の開所は除いています。
なぜ差が出るのかは、分からない
立地、送迎、作業の内容、受け入れている人、開設からの年数。
理由はいくつも思い浮かびますが、このデータからは確かめられません。
それでも、はっきりしていることがあります。
市全体で利用者が増えているさなかでも、事業所ごとの利用状況には大きな幅がある。
市の計画が示しているのは、市全体の利用が増える見込みです。その増えた分がどの事業所に向かうのかまでは、分かりません。
定員は先に決まり、収入は後から動く
この幅が、開業の検討にそのまま効いてきます。
B型を始めるには、まず定員を決めます。横浜市の条例では 20人以上 です。
※ほかのサービスと組み合わせる多機能型の場合は、10人以上です。
定員が決まれば、物件の広さも、置く職員の数も決まります。場所と人は、利用者が来る前にそろえます。
一方で、報酬は利用があった日ごとに計算されます。定員20人でも、毎日20人が通うとは限りません。
だからといって、中央値の0.80をそのまま自分の見込みにするのも違います。
0.9以上の事業所も、0.5未満の事業所も、実際にあります。自分がどちらに近いかは、開業前の数字からは決まりません。
分かるのは、先に決まる費用と、後から動く収入のあいだに、これだけの幅がありうるということです。
もう一つの軸、生産活動と工賃
B型には、利用者の確保と並ぶもう一つの軸があります。生産活動です。
同じ190事業所で平均工賃(月額)を見ると、中央値は およそ1.8万円。
ここにも幅があり、月1万円に届かないところが23ありました。
工賃は、生産活動から生まれます。何を請け負い、いくらで売り、どれだけ経費をかけるか。その結果が工賃の水準になります。
そして工賃は、事業所の収入ともつながっています。B型の基本報酬は、平均工賃の額によっても区分が分かれる仕組みです。
つまりB型は、次の二つを同時に成り立たせる事業です。
- 通ってくる人を確保すること
- その人たちと取り組む仕事を組み立てて、工賃を生むこと
人が集まっても仕事が細ければ、工賃は上がりません。良い仕事があっても、通う人が少なければ事業は回りません。
開業前に立てる問いを変える
「横浜でB型の需要はあるか」。
この問いには、市全体の数字が答えてくれます。
「自分の事業所には、どういう人が、どこから、どれくらい通ってくるのか」。
こちらに答えるものは、市全体の数字の中にはありません。
それでも、市の事業所一覧と県の工賃実績を開けば、開きたい地域の事業所について、定員・1日の平均利用者数・工賃を並べることはできます。
そこまでやっておけば、「利用者が増えているから大丈夫だろう」という見込みで計画を立てずに済みます。
どの地域で、どんな人に、どんな仕事を用意するのか。そこから先は、一つひとつの事業計画の話になります。
出典
- 横浜市 障害福祉サービス事業所・施設一覧(2026年4月)
- 神奈川県 就労継続支援B型事業所の工賃実績(令和6年度)
- 障害福祉情報サービスかながわ(新規指定の件数)
- 第5期横浜市障害者プラン(素案)、2026年9月公表(p.151)
更新日:2026年10月14日 執筆:行政書士 大塚栄一

