横浜市の障害者プランを開くと、最初に目に入るのは数字です。
2026年9月に公表された第5期プランの素案では、就労継続支援B型の利用が 6,735人分から9,460人分 に増える見込みです。およそ4割の増加です。
これだけ増えるなら、市は事業所が増えることを望んでいるのではないか。
私も最初は、そう読みかけました。
けれども、計画のほかのページや市の補助と合わせて読むと、そう単純ではありませんでした。
この記事のポイント
- 計画の「見込量」は、市が開業を勧めている数字ではない
- 利用が増えるサービスでも、総量規制の対象になりうる
- 市が何を重んじているかは、本文や補助の対象に表れる
- 計画・補助・事前相談の3つを、組み合わせて読む
見込量は、計画のどこにあるか
見込量は、第3章の「計画値」の表に載っています。
素案は160ページを超えるので、場所を挙げておきます。
| サービス | ページ(素案) |
|---|---|
| グループホーム | 89 |
| 放課後等デイサービス | 139 |
| 就労継続支援A型・B型 | 151 |
計画値は、令和9〜11年度の3年分です。プラン自体は6年間ですが、見込量は3年ごとに見直されます。
「見込み」は「おすすめ」ではない
見込量は、何人が利用すると市が見込んでいるかの数字です。
事業所をいくつ増やしてほしいか、を示す数字ではありません。
当たり前のようですが、開業を考える側に立つと、ここがいちばん混同しやすいところです。
もう一つ。見込量は市全体の数字です。区ごとの見込みはありません。
市全体で利用が増えることと、自分の事業所に人が集まることは、別の問題です。
実際、B型では市全体の利用が増えるなかでも、事業所ごとの利用状況に大きな差がありました。
素案91ページにある「総量規制」
開業を考える人に、表と同じくらい読んでほしいのが91ページです。
市はここで、次のように書いています。
- 全体として、事業所は充実してきた
- 不足しているサービスは、必要な量を確保する
- 一部のサービスは、需給バランスを踏まえ、必要に応じて総量規制を含む手法を検討する
総量規制とは、必要なサービス量がすでに満たされているときに、新しい事業所の指定を制限できる制度です。
対象になりうるサービスには、障害者支援施設や生活介護などとともに、A型、B型、グループホーム、放課後等デイサービス がすべて入っています。
つまり計画値は、「ここまでは増えてよい」という余地であると同時に、新規指定を制限するときの物差しにもなりうる数字です。
ただし、どのサービスに、いつ適用するのかは書かれていません。
「A型やB型は規制される」と読むことはできません。読み取れるのは、市が量を調整する手段も視野に入れている、というところまでです。
今読めるのは「素案」です
素案は2026年9月17日に公表され、市民意見の募集を経て、2027年3月に策定される予定です。
それまでに、数字が変わる可能性があります。今効力があるのは、第4期プラン(改定版)です。
素案の数字を使うときは、次の3つで十分です。
- 「素案(2026年9月公表)」と書き添え、ページを控える
- 第4期の実績と、一続きの推移としてつなげない
- 確定版が出たら確かめ直す
見込量と一緒に読む、三つの資料
市がそのサービスをどう考えているか。
それは、数字よりも次の三つに表れます。
① 計画の本文:グループホームの例
グループホームは、利用人数が 6,295人から7,000人 に増える見込みです。
一方で、1年あたりの新設定員は、現状の255人から各年180人に減っています。
利用は増えるのに、新しい定員は減る。
手がかりは本文にあります。市は、強度行動障害や医療的ケアのある人が暮らす、2〜3名定員の小さなグループホームに新たに取り組むとしています(目標10か所)。
「一般的なグループホームは抑える」とまでは言えません。それでも、市が増やしたい住まいの形は読み取れます。
② 市の補助:B型の例
市の設置費補助は、令和8年度分ではB型の新設も対象でした。
令和9年度分では、B型は 重症心身障害者を受け入れる施設に限る とされています。
利用は約4割増える見込みなのに、補助の対象は絞られようとしています。
補助がなくても開業はできます。ただ、市が特に整備を支えたい対象を知る手がかりにはなります。
③ 事前相談:市が確かめること
日中活動系の事前相談では、生産活動の収支や、事業所運営の収支の継続性が確かめられます。
A型なら、生産活動の収支見込みを 開所から5年分。
市全体の利用が増えていても、問われるのは自分の事業計画の中身です。
4つのサービスを並べると
就労継続支援A型
- 見込み:778→975人分(約25%増)
- 本文:工賃の向上、多様な働き方
- 補助:設置費補助の対象外
- 手続:事前相談で、生産活動の収支見込み5年分
就労継続支援B型
- 見込み:6,735→9,460人分(約40%増)
- 本文:工賃の向上、「働き方のグラデーション」
- 補助:令和9年度分は重症心身障害者を受け入れる施設に限定
- 手続:事前相談。定員は20人以上(市条例。多機能型は10人以上)
グループホーム
- 見込み:利用人数6,295→7,000人、新設定員は年255→180人
- 本文:重度・個別のニーズに応じた住まい、2〜3名定員の小さなホーム
- 補助:補助を受ける新設は年1回の募集・選考
- 手続:障害施設サービス課のグループホーム担当
放課後等デイサービス
- 見込み:受給者12,771→17,500人、事業所542→670か所
- 本文:民間事業所の方向性についての記述は見当たらず
- 補助:主に重症心身障害児を対象とする事業所の整備補助
- 手続:こども青少年局の説明会 → 個別相談 → 指定面接
※4つとも、素案p.91で総量規制の対象になりうるサービスに挙げられています。補助は2026年9月時点の市のページによる。
見込みは、4つとも増えています。
それでも、本文と補助と手続を並べると、市が見ているところはサービスごとにかなり違います。
一方で、ここまで調べても分からないことは残ります。
- どの区で、どのサービスが足りないのか
- 自分の事業所に、何人来るのか
- 総量規制が、いつ、どのサービスで行われるのか
計画は、市の見込みと考え方を知る資料です。開業できるかどうかを教えてくれる資料ではありません。
自分のサービスで確かめるには
私なら、この順で読みます。
- 素案か確定版かを確かめる
- 計画値の表で、単位と年度を見る
- 同じ章の本文から、市の言葉(拡充、需給バランス、不足など)を拾う
- 91ページを読む
- 補助の募集ページで、今年度の対象を見る
- 事前相談や説明会の案内で、市が確かめることを見る
それでも分からないことは、書き出して窓口に聞きます。
「こういう計画だが、この点はどう扱われるか」と具体的に聞くと、答えも具体的になります。
| 知りたいこと | 窓口 |
|---|---|
| 障害者プラン | 健康福祉局 障害施策推進課 |
| 設置費補助 | 健康福祉局 障害施設サービス課(整備推進担当) |
| 日中活動系の事前相談・グループホーム | 健康福祉局 障害施設サービス課 |
| 子ども向けの通所サービス | こども青少年局 障害児福祉保健課 |
数字の向こうにあるもの
計画の数字が増えていると、つい「チャンス」という言葉が浮かびます。
けれども市が何を増やしたいのか、どこに慎重なのかは、数字よりも本文や補助、手続の中に散らばっていました。
自分の考えている事業が、市の方向とどこで重なり、どこでずれているのか。
それを確かめることが、横浜で開業を考えるときの最初の作業になるのだと思います。
※素案の数字は、確定版が出たらこのページで更新します。
出典
- 第5期横浜市障害者プラン(素案)、2026年9月公表(p.89、p.91、p.139、p.151)
- 第4期横浜市障害者プラン(改定版)
- 横浜市 障害福祉サービス事業所設置費補助(令和8年度分、令和9年度分意向調査)
- 横浜市 日中活動系サービスの事前相談の案内
- 横浜市 障害福祉サービス事業所・施設一覧(2026年4月)
更新日:2026年10月14日 執筆:行政書士 大塚栄一

