磯野家の家族関係を例に、相続のルールを考えるシリーズです。作品の設定を説明する記事ではなく、公式との関係もありません。
今回は、人ではなく家の話です。
仮定は、波平さんの遺産は七人が住むこの家が中心で、預貯金はそれほど多くない。家は波平さんの単独名義です。
先に書いておきます。この記事は、フネさんが家を追い出されるという話ではありません。問題は、その先です。
この記事のポイント
- 亡くなった直後は、何もしなくても「配偶者短期居住権」で住まいが守られる
- 家を相続すると、生活に使える財産が残らないことがある
- 「配偶者居住権」なら、所有と住み続ける権利を分けられる。ただし決めなければ発生しない
第1問 亡くなった直後、フネさんの住まいはどうなるのでしょうか
何もしなくても守られます。亡くなった人の家に無償で住んでいた配偶者は、その家を無償で使う権利を持ちます(配偶者短期居住権。民法1037条)。
期間は、遺産分割で家の行き先が決まった日か、亡くなってから6か月を過ぎた日の、いずれか遅い日までです。家の行き先が決まるまでをつなぐ権利、と考えると分かりやすいでしょう。なお、家が遺言で配偶者以外の人に渡された場合などは、その人から消滅の申入れを受けてから6か月で終わります。
第2問 フネさんがこの家を相続すれば、それで終わりでしょうか
住まいは確保できます。ただ、今回の仮定では、家が取り分の多くを占め、預貯金などこれからの暮らしに使える財産を十分に受け取れないことがあります。
法務省も、制度を見直した理由として、配偶者が家を取得すると「他の財産を受け取れなくなってしまう」点を挙げています。
第3問 家そのものを相続しなくても、住み続ける方法は
あります。配偶者居住権です。家の所有権とは別に、配偶者がその家に住み続けるための権利で、期間は原則として終身です(民法1030条)。
ただし、こちらは当然には発生しません。遺産分割で取得すると決めるか、遺言で渡しておく必要があります(民法1028条)。また、家を配偶者以外の人と共有していた場合は成立しません。
| 権利 | 発生 | 期間 |
|---|---|---|
| 配偶者短期居住権 | 何もしなくても発生 | 家の行き先が決まるまで(最低6か月。遺贈などの場合は申入れから6か月) |
| 配偶者居住権 | 遺産分割か遺言で決める | 原則として終身 |

ここまでで分かること
家を相続することと、その家に住み続ける権利を持つことは、同じではありません。
実家でいちばん大きな財産が家そのものである場合は、この二つが分けられることを知っておくと、考えられる道が一つ増えます。
出典
- 民法1028条、1030条、1037条
- 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」
更新日:2026年10月15日 執筆:行政書士 大塚栄一

