磯野家の家族関係を例に、相続のルールを考えるシリーズです。作品の設定を説明する記事ではなく、公式との関係もありません。
仮定は前回と同じです。波平さんが亡くなり、遺産分割の話し合いが終わらないうちに、サザエさんも亡くなりました。そのため波平さんの遺産分割の話し合いには、フネさん、カツオさん、ワカメさん、マスオさん、タラちゃんの五人が加わることになりました。
このうち、カツオさん、ワカメさん、タラちゃんは未成年です。それぞれの親が代わりに話し合えばよいのでしょうか。
この記事のポイント
- 親も子も同じ遺産分割の当事者なら、親は子を代理できない(利益相反。民法826条)
- 家庭裁判所に、子のための「特別代理人」を選んでもらう
- 未成年の子が二人いれば、特別代理人も一人ずつ必要になる
第1問 タラちゃんの代わりに、マスオさんが話し合えばよいのでしょうか
できません。
マスオさん自身も、この遺産分割の当事者です。自分の取り分を増やせば、子の取り分が減る。こうした親と子の利益がぶつかる行為について、民法は親がそのまま子を代理することを認めていません(民法826条1項)。
裁判所も、利益相反の例として「共同相続人である母と未成年の子が行う遺産分割協議」を挙げています。
第2問 カツオさんとワカメさんは、フネさんが代理すればよいのでしょうか
これもできません。フネさんも波平さんの相続人です。
同じ形が、一つ上の世代でも起きています。子を代理するはずの親が、その子と同じ遺産を分ける相手になっているのです。

第3問 では、誰が話し合うのでしょうか
特別代理人です。親権者などが家庭裁判所に申し立て、その子のためだけに選んでもらいます。
家族の話し合いなのに家庭裁判所が出てくるのは、大げさに思えるかもしれません。けれど、親が自分の立場でも話す場面では、子の側にその子だけのための人が必要になります。
ここまでで分かること
相続人になれることと、その子の代わりに誰が話すかは、別の問題です。
ご自分の家系図に未成年の相続人がいる場合は、その子の親も相続人になっていないかを見てください。遺言で分け方を決めておけば、そもそも遺産分割の話し合いが要らなくなることもあります。
※特別代理人の選任申立ては家庭裁判所への手続きです。手続きの代理は弁護士、申立書の作成は司法書士の業務です。
更新日:2026年10月15日 執筆:行政書士 大塚栄一

