磯野家の家族関係を例に、相続のルールを考えるシリーズです。作品の設定を説明する記事ではなく、公式との関係もありません。
今回は、サザエさんが健在の磯野家に戻ります。
仮定はこうです。年を重ねた波平さんの病院への付き添いや日々の介助を、マスオさんが長く続けていた。お金は受け取っていません。
その後、波平さんが亡くなります。マスオさんは波平さんの相続人ではありません。では、長く支えてきたことは、相続でまったく考えられないのでしょうか。
この記事のポイント
- 相続人でない親族は、相続人に「特別寄与料」を請求できることがある(民法1050条)
- 相続人自身の貢献は「寄与分」として、遺産分割の中で考える(民法904条の2)
- 「介護していた」だけでは足りず、請求には期限がある
第1問 どのくらいの世話をしていれば、法律の問題になるのでしょうか
条文に「何時間以上」「何年以上」という基準はありません。
書かれているのは、無償で療養看護などをし、それによって亡くなった人の財産の維持または増加について「特別の寄与」をしたことです。
参考になるのが、相続人の「寄与分」の裁判例です。そこでは「親族間の通常の扶助の範囲を超える」かどうかが問題にされてきました。ただし特別寄与料にそのまま同じ基準が使われるとは、言い切れません。
第2問 マスオさんは何を請求できるのでしょうか
特別寄与料です。マスオさんは波平さんの一親等の姻族で、民法上の親族に当たります(民法725条)。
請求する相手は、相続人のフネさん、サザエさん、カツオさん、ワカメさんです。金額はまず話し合い、まとまらなければ家庭裁判所の手続きを使えます。
家庭裁判所への請求には期限があります。相続の開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年を過ぎると請求できません(民法1050条2項)。
第3問 同じことを、サザエさんがしていたら
| 介護した人 | 使う仕組み | どこで考えるか |
|---|---|---|
| サザエさん(相続人) | 寄与分 | 遺産分割の話し合いの中で、取り分を調整する |
| マスオさん(相続人でない親族) | 特別寄与料 | 相続人に金銭を請求する。期限あり |
同じ家で同じ世話をしても、たどる道は二つに分かれます。分かれ目は、相続人かどうかです。

ここまでで分かること
介護の貢献は、まったく考えられないわけではありません。ただし、認められるハードルは高く、期限もあります。
確実に報いたいなら、介護を受ける側が、遺言でその人に財産を残しておく方法があります。
出典
- 民法725条、904条の2、1050条
- 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」
- 裁判所「特別の寄与に関する処分調停」
- 法務省 法制審議会民法(相続関係)部会 参考資料「寄与分に関する裁判例」
更新日:2026年10月15日 執筆:行政書士 大塚栄一

