磯野家の家族関係を例に、相続のルールを考えるシリーズです。作品の設定を説明する記事ではなく、公式との関係もありません。
このシリーズでは、いろいろな仮定を置いてきました。けれど、ずっと動かさなかったことが一つあります。マスオさんは、波平さんの相続人ではない。
同じ家に住んでいても。長く介護をしていても。最後に、その一点だけを動かします。マスオさんが、波平さんと養子縁組をしていた。いわゆる「婿養子」の形です。
この記事のポイント
- 養子は、縁組の日から養親の子。第1順位の相続人になる(民法809条)
- 普通養子縁組では、実の親との親子関係も続く
- 配偶者のある人の縁組には、原則として配偶者の同意が必要(民法796条)
第1問 マスオさんは、波平さんの相続人になるのでしょうか
なります。養子は、縁組の日から養親の子として扱われます。
波平さんの子は、サザエさん、カツオさん、ワカメさん、マスオさんの四人になり、子の取り分は等しいので、三人の分はその分だけ小さくなります。
同居の年月でも、介護の量でもなく、届出で変わる。ここが、前回までとの違いです。
第2問 マスオさんは、実の親の相続人ではなくなるのでしょうか
なくなりません。普通養子縁組では、養親との親子関係が新しく生まれ、実の親との親子関係はそのまま続きます。
実の親との関係が終わる特別養子縁組もありますが、こちらは子どものための制度で、年齢の制限があります。大人のマスオさんには使えません。
「婿養子に入ると、実家の方はもらえなくなる」という言い方を聞くことがありますが、普通養子縁組ではそうはなりません。

第3問 この縁組は、二人だけで決められるのでしょうか
決められません。配偶者のある人が養子縁組をするには、原則として配偶者の同意が必要です。波平さんにはフネさんが、マスオさんにはサザエさんがいます。
相続人が一人増えるというのは、そういうことです。
8本を通して見てきたこと
このシリーズでいちばん動かなかったのが、マスオさんの立場です。同じ家で暮らし、介護を続けても、相続人にはならなかった。なったのは、養子縁組をした今回だけです。
家族としての近さと、相続法が見ている関係は、別のものさしです。そして、その関係は暮らしぶりからは分からず、戸籍で確かめるものです。
磯野家で見てきたことは、そのままご自分の家系図にも当てはめられます。一度、家族の顔を思い浮かべながら、線を引いてみてはいかがでしょうか。
更新日:2026年10月15日 執筆:行政書士 大塚栄一

