横浜で障害福祉事業を始めるなら、どのサービスか。B型・グループホーム・放デイ・A型の成立条件

横浜市で障害福祉の事業所を一つ始めるとしたら。

就労継続支援B型、グループホーム、放課後等デイサービス(以下、放デイ)、就労継続支援A型。

この4つを、「事業として成り立つために何が必要か」という観点で比べます。

ここでいう「成立条件」は、指定を受けるための基準ではありません。事業として続けていくために必要な条件のことです。

この記事のポイント

  • 4つとも利用は増える見込み。ただし、それだけでは開業の根拠にならない
  • 成り立つ条件はサービスごとに違う
  • 特にA型は、利用者を雇い、その賃金を支える仕事までつくる必要があり、事業の形が大きく違う
  • 4つに共通するのは、物件から考えないこと

利用は4つとも増える。それだけでは根拠にならない

横浜市の障害者プラン素案では、4つとも利用が増える見込みです(令和7年度 → 令和11年度)。

サービス利用の増え方
B型約4割増
放デイ約4割増
A型約25%増
グループホーム約1割増

これだけを見ると、「利用者が増えるのだから、新しい事業所にも需要がある」と考えたくなります。

しかし、そこには一段飛躍があります。

市内のB型190事業所を調べると、1日の平均利用者数が定員の9割以上の事業所が58。半分に届かない事業所が23。

利用者が増えるサービスと、新しく開けば利用者が集まるサービスは、同じではありません。

→ 横浜市で就労継続支援B型を開業する前に

B型:利用者と生産活動を同時に

B型には、A型のような雇用契約と最低賃金の仕組みはありません。その分、事業の形はシンプルです。

ただし、工賃を生産活動から生み出す点はA型と同じです。

定員は市の条例で 20人以上。物件を借り、職員を置いて開所しても、最初から20人が来るわけではありません。

※多機能型の場合は10人以上です。

報酬は実際の利用に応じて計算され、基本報酬の区分は平均工賃によっても変わります。

成立条件:利用者の確保と生産活動を、同時に成り立たせること。

グループホーム:暮らしを支え続ける体制

グループホームは、障害のある人の生活の場です。

利用者の仕事をつくる必要はなく、物件と人員をそろえるという形もイメージしやすい。新しく参入するときに、入口が見えやすいサービスです。

ただし、「始める形が見えやすい」ことと、「運営しやすい」ことは別です。

誰が住むかによって、夜間を含む人員配置も、職員に必要な専門性も、住環境も変わります。

横浜市は、強度行動障害のある人の利用が約35%増えると見込み、2〜3名定員の小さなグループホームに新しい目標と補助を設けました。

成立条件:入居する人に合わせて、その暮らしを支え続けられる体制をつくること。

→ 横浜市でグループホームを開設する前に

放デイ:支援の中身と、それを担う人

放デイの最低定員は 10人(主に重症心身障害児を対象とする場合は5人)。B型より小さく始められるように見えます。

しかし提供するのは、単なる預かりではなく、障害のある子どもへの支援です。

令和6年度からは、5領域を含む支援プログラムの作成と公表が求められています。横浜市も、市内の事業所のあいだの「支援の質の開き」を課題に挙げています。

成立条件:受け入れる子どもを具体化し、支援の中身と、それを提供できる体制をつくること。

小さく始められることと、簡単に始められることは別です。

→ 横浜市で放課後等デイサービスを開業する前に

A型:雇用を維持できる「仕事」

A型は、4つの中で事業の形が大きく違います。

利用者と雇用契約を結び、原則として最低賃金以上を払います。その賃金は、生産活動の収支でまかなうのが原則です(指定基準 第192条)。

全国では、経営状況を把握した事業所の 50.7% が、この基準を満たしていませんでした(令和5年3月末)。

横浜市の事前相談では、生産活動の収支見込みを開所から5年分求められます。

すでに安定した仕事を持ち、その一部を生産活動として組み立てられる事業者。

「A型をやりたい。仕事はこれから探す」という事業者。

この二つでは、スタート地点が大きく違います。

成立条件:雇用を続けられる仕事を、事業として成り立たせること。

→ 横浜市で就労継続支援A型を開業する前に

4つを並べると

サービスまず見るもの
B型利用者と生産活動
グループホーム入居する人と支援体制
放デイ受け入れる子どもと支援の中身
A型雇用する利用者と仕事

「どれが簡単か」ではなく、「何がそろえば、その事業が成り立つのか」。

4つを比べるときに見るべき違いは、そこにあります。

物件から始めると、順番が逆になる

4つに共通していたのは、物件ありきで考えないことでした。

誰に何を提供するかが決まれば、必要な人員、広さ、設備、立地、収支の条件が決まります。

もちろん、物件探しを最後まで待つという意味ではありません。横浜市の事前相談では、物件の平面図や開設場所の見通しを求められます。物件探しと事業計画は、実際には並行して進みます。

避けたいのは、「この物件が空いているから、ここで何か障害福祉をやろう」から始めることです。

誰に何を提供するのか → そのために何が必要か → その条件に合う物件か

この順番は、崩さないほうがよいと思います。

市の計画は「伸びるサービスの一覧」ではない

4つを調べて分かったことが、もう一つあります。

障害者プランの利用見込みを、「これから需要が伸びるサービスの一覧」として読むだけでは足りません。

計画がそれぞれのサービスで見ている課題は、違います。

  • B型:工賃の向上
  • グループホーム:強度行動障害のある人や、小さな住まいへの対応
  • 放デイ:支援の質と、重症心身障害児への支援
  • A型:一般就労への移行

だから見るべきなのは、「何人増えるのか」だけではありません。

横浜市が、誰への、どんな支援を課題として見ているのか。

そこまで確認したうえで、自分が考えている事業との関係を見る必要があります。

公開情報だけでは、最後の判断まではできない

一方で、公開情報には限界があります。

  • 区ごとの利用者数は、公開されている資料では確認できなかった
  • 事業所ごとの利用状況が分かったのは、県の工賃実績があるB型だけ
  • 計画値の背景が、素案だけでは分からないものもあった

公開資料から分かるのは、市全体の方向と制度の仕組みまでです。

自分が開こうとしている地域で、利用者を確保できるのか。必要な人材を集められるのか。収支が成り立つのか。

そこから先は、自分の事業計画として調べ、市の事前相談などで制度上の扱いを確かめる領域です。

公開情報は、「この事業なら成功する」という答えをくれるものではありません。どこまで分かっていて、次に何を確かめるべきかを知るための材料です。

「需要があるサービス」より、「成り立たせられる事業」を

利用者が増える。補助がある。定員が小さい。物件が見つかった。

どれも大事な情報ですが、それだけで事業は決まりません。

見るべきなのは、そのサービスの成立条件は何か。そして、自分がその条件をそろえられるのかです。

「需要があるサービスを探す」から、「自分が成り立たせられる事業を考える」へ。

横浜で開業を考えるときの出発点は、そこにあると思います。

※素案の数字は、第5期プランが確定する2027年3月にこのページで更新します。

どのサービスで始めるか迷っている方へ

考えている対象者や物件、手元の仕事や人材を伺い、それぞれのサービスで何が足りて、何が足りないかを一緒に整理します。

出典

更新日:2026年10月14日 執筆:行政書士 大塚栄一