2026年10月改訂
「初めてなら、どのサービスが始めやすいのか」
この記事は2026年4月の公開時点で、就労継続支援B型か、物件の目処が立っていればグループホームを軸に検討することを勧めていました。
その後、2026年6月から、B型とグループホームを含む4つのサービスで、新しく指定を受けた事業所の基本報酬が低くなりました。2027年4月からは、グループホームも総量規制の対象になります。この変化をふまえて、内容を改めます。
先に結論
2026年のいま、「このサービスなら開業しやすい」とサービスの名前だけで決めることはできません。見るべきなのは次の二つで、この二つは別のことです。
- 指定を受けられるか:開業予定地の自治体が、そのサービスで総量規制をしていないか。新規指定の審査で、事業計画の根拠を自分で説明できるか。
- 続けられるか:新規指定の単価で、利用者が集まるまでの期間も含めて、収支が成り立つか。
1. 2026年までに変わった3つのこと
① 新規指定の事業所は、基本報酬が低くなった(2026年6月から)
就労継続支援B型、グループホーム(介護サービス包括型・日中サービス支援型)、児童発達支援、放課後等デイサービスでは、2026年6月1日以降に新しく指定を受けた事業所の基本報酬が、既存の事業所より低く設定されています。期間は「令和9年度報酬改定までの間」とされています。既存の事業所は従前の単価のままです。
重度の障害がある人への支援、離島・中山間地域、自治体が公募や設置の補助によって必要と認めた事業所などは、従前の単価が適用される場合があります(配慮措置)。
② 総量規制の活用が促され、グループホームも対象に(2027年4月から)
総量規制は、自治体が計画で見込んだサービスの量に対して事業所の供給が足りている場合などに、新しい指定をしないことができる仕組みです(障害者総合支援法第36条第5項)。定員を増やすための変更にも準用されます。2025年から2026年にかけて、国は自治体にこの仕組みの活用を促す方向に動きました。2027年4月1日からは、グループホーム(共同生活援助)も対象に加わります。
ただし、条文は「指定をしないことができる」で、規制するかどうかは指定権者の判断です。全国一律に開業が止まる制度ではありません。
③ 新規指定の審査で確かめる内容が具体的になった
2025年11月の就労継続支援(A型・B型)の新規指定ガイドラインは、生産活動の内容、取引先、収入の根拠、工賃・賃金を払えるかを、事業計画書と収支予算書で確認するよう自治体に求めています。2026年6月の指定ガイドラインは、指定前の確認を面談で行うことを推奨し、面談の相手を代理人ではなく法人の代表者や管理者、サービス管理責任者等としています。どちらも自治体への「技術的な助言」で、実際の審査の進め方は自治体によって異なります。
2. サービス別に見ると
| サービス | 新規指定の基本報酬(2026年6月〜) | 総量規制の対象か | 開業前に確かめたいこと |
| 就労継続支援B型 | 引き下げ(従前の1000分の984) | 対象 | 生産活動の取引先・単価・数量から、利用者の工賃を払えるか。工賃は給付費で補えない |
| グループホーム(介護サービス包括型・日中サービス支援型) | 引き下げ(従前の1000分の972) | 2027年4月から対象 | 物件の建築・消防の条件、夜間の体制、空室が出たときの収支。外部サービス利用型は引き下げの対象外 |
| 放課後等デイサービス/児童発達支援 | 引き下げ(放デイ1000分の982、児発1000分の988) | 対象 | 児童発達支援管理責任者の確保。支援プログラムの作成・公表(2024年度から運営基準) |
| 就労継続支援A型 | 引き下げの対象外 | 対象 | 利用者と雇用契約を結び、最低賃金以上を払う。生産活動の収支が賃金総額以上であることが指定基準 |
| 生活介護 | 引き下げの対象外 | 対象 | 必要な面積と、介護職員・看護職員などの人員。基本報酬はサービス提供時間の区分で変わる |
| 就労移行支援 | 引き下げの対象外 | 対象外 | 一般就労への移行実績が報酬に反映される。利用期間は原則2年 |
引き下げの割合は、従前の基本報酬の単位数に掛ける割合です。総量規制の「対象」は自治体が規制できるサービスという意味で、実際に規制しているかは自治体ごとに違います。
3. 「B型かグループホーム」は、いまどう読むか
就労継続支援B型
利用者と雇用契約を結ばない点は、いまも同じです。需要もあります。利用者は約35万人で、令和6年度には2,027か所が新たに指定を受けました。
ただ、「雇用契約がないから始めやすい」とは言えなくなりました。工賃は生産活動の収入から払う仕組みで、令和5年度には、生産活動の収支で工賃を賄えていない事業所が18.7%ありました(財務省の調査)。平均工賃の計算方法や報酬区分の基準も見直され、新規指定では生産活動の根拠が確認されます。問われるのは、生産活動を事業として組めるかです。
グループホーム
利用者は3類型合わせて20万人を超え、介護サービス包括型の平均の収支差率は6.9%の黒字です(令和6年度決算)。需要があること、平均では黒字であることは事実です。
一方で、包括型でも39.0%の事業所は赤字で、定員7人以下の4区分のうち3区分は、平均でも収支差率がマイナスでした(参考値)。国は、地域によっては供給が過剰になっている可能性を挙げて、2027年4月からグループホームを総量規制の対象にします。施行前に申請した案件を対象から外す経過措置は、改正の命令に置かれていません。
旧版の比較表では、B型とグループホームの「収益の安定性」を「高」としていました。これは既存事業所の平均にもとづく見方で、新規指定の単価や、赤字の事業所の割合を考えると、そのままは使えません。今回の改訂で削除しました。
4. 引き下げの対象外なら始めやすい、とは限らない
A型、生活介護、就労移行支援は、新規指定の基本報酬の引き下げの対象ではありません。国が対象を選んだ条件は、収支差率が5%以上で、事業所数が3年続けて5%以上伸びていることなどでした。国の資料の数値をこの条件に当てはめると、A型と生活介護は収支差率は5%を超えていますが、事業所数の伸びが5%を下回る年があり、A型は減っている年もあります。対象外であることは、始めやすいという評価ではありません。A型と生活介護は総量規制の対象でもあります。
反対に、配慮措置(重度の障害がある人への支援、公募で設置する事業所など)は、単価の差を避けるための手段ではありません。誰に、どの地域で、どのような支援を提供するかという、事業の中身にかかわる条件です。
5. 開業前に確かめること
- 予定しているサービスは、新規指定の引き下げの対象か。収支計画に、新規指定の単価を使っているか(処遇改善加算も、引き下げ後の単位数から計算される)
- 開業予定地の指定権者は、そのサービスで総量規制をしているか、予告しているか。次の計画の素案に記述はあるか
- 配慮措置や公募の対象になる支援・地域か
- 生産活動、利用者の見込み、人員の確保について、代表者自身が指定の審査で根拠を説明できるか
- 利用者が集まるまでの資金を、月ごとの資金繰りで確かめたか(開業資金はいくら必要?)
横浜市で開業する場合:横浜市の次期障害者プラン(第5期)は2026年10月時点で素案の段階です。同じ時点で、横浜市がどのサービスで総量規制を行うかの公表は確認できていません。計画の確定と市の公表を確認してください。
詳しい検証はnoteで
この記事の根拠は、noteの連載「障害福祉開業、その通説は本当か」で一次資料から確かめています。
- 障害福祉の新規開業は報酬が下がる? 2026年6月から変わった「新規指定」の扱い
- 就労継続支援B型はいまも参入しやすいのか?
- 放課後等デイサービスはいまも開業・運営しやすいのか?
- 就労継続支援A型は、制度改正で難しくなったのか?
- 障害者グループホームは、いまも参入しやすいのか?
- 4つの通説は、本当だったのか?(答え合わせ)
- 「総量規制で開業できなくなる」は本当か?
- 横浜で障害福祉事業を始める前に B型・グループホーム・放デイ・A型、それぞれの成立条件は?
🧭 次のステップ:開業スケジュールへ
どの事業を検討するかが見えてきたら、次は物件探しから指定申請までの流れです。
- ステップ④の1本目へ:[障害福祉事業の開業準備チェックリスト|何から始めるべきか](ステップ④:1 / 7記事目)
✉️ ご相談について
「この地域で、このサービスは指定を受けられるか」「新規指定の単価で収支は成り立つか」。答えは、開業予定地とサービス、事業の中身によって変わります。
- 開業予定地の計画・総量規制・公募の確認
- 新規指定の単価を織り込んだ収支シミュレーション
- 指定権者との事前協議の準備
行政書士大塚栄一事務所では、横浜を中心に、指定申請から開業後の届出までご相談を承っています。
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出典
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(2026年2月18日)
- 厚生労働省・こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(2026年3月31日)
- 厚生労働省 第51回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料1(2025年12月16日)
- 障害者総合支援法 第36条(e-Gov法令検索)
- 障害者総合支援法施行規則(令和8年内閣府・厚生労働省令第2号による改正、2027年4月1日施行)
- 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」(2026年6月)
- 厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」(2025年11月28日)
- 財務省「令和6年度予算執行調査」総括調査票(16)障害福祉サービス等
- 厚生労働省 第52回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料1(2026年1月22日)
- 令和7年障害福祉サービス等経営概況調査(第48回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料4・5、2025年11月25日)
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」
- 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)


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