自分ひとりで書ける遺言なのに、多くの人が公正証書遺言を選ぶ理由

遺言には、紙とペンがあれば作れる方法があります。自筆証書遺言です。

それでも毎年、たくさんの人が、証人を2人集め、公証人に手数料を払って公正証書遺言を作っています。

この記事のポイント

  • 自筆証書遺言は、証人も公証人も要らず、法務局に3,900円で預けられる
  • その保管は6年余りで約13.2万件。公正証書遺言は1年で約12.4万件
  • 法務局が確かめるのは形式まで。内容が有効かどうかは保証しない

自筆証書遺言は、ひとりで作れる

全文、日付、氏名を自分の手で書き、押印すれば、法律上の遺言になります。財産目録だけは、パソコンで作ったものや通帳のコピーを添えることもできます(各ページに署名と押印が必要)。

2020年からは、法務局に預けられる「自筆証書遺言書保管制度」も始まりました。手数料は1通3,900円です。

この制度を使うと、相続が始まったあとの家庭裁判所の「検認」も要らなくなります。

横浜市内で遺言書の保管を受け付けているのは、横浜地方法務局の本局(中区北仲通・横浜第2合同庁舎)だけです。各区の出張所では受け付けていません。手続きは予約制です。

それでも、公正証書が選ばれている

保管制度の申請は、始まってから6年余りで累計約13.2万件(2026年9月末)。

公正証書遺言は、2025年の1年だけで約12.4万件です。

ひとりで作れる方法を法務局に預けた件数の6年分と、手間のかかる方法の1年分が、ほぼ同じ規模です。法務局に預けず手元で保管される自筆証書遺言はこの数に入らないので、単純に比べられません。それでも、公正証書遺言を選ぶ人が少なくないことはうかがえます。

違いは「誰がどこまで確かめるか」

自筆証書遺言(保管制度)公正証書遺言
作る人本人公証人(本人から聞き取る)
証人不要2人
確かめる範囲全文・日付・氏名の自書など、形式だけ公証人が本人とやり取りして作成
費用3,900円公証人手数料(財産額による)

法務省は、保管制度は「遺言書の有効性を保証するものではない」と明記しています。

「自分で書ける」ことと、「家族が安心して受け取れる」ことは、別の話なのかもしれません。公正証書を選ぶ人は、その差を埋めるために手間と費用を払っているのかもしれません。

どちらが合うかを、家族で話してみる

どちらが優れている、という話ではありません。

財産の中身、家族の関係、何を残したいかで、合う方法は変わります。まずは、その話をしてみることからです。

公正証書遺言の作成支援

ご意向の確認、戸籍と財産の調査、文案の作成、公証役場との調整、証人2名の手配、当日の同行まで対応します。

更新日:2026年10月15日 執筆:行政書士 大塚栄一