親の後見人を選ぶのは、家族ではない

きっかけは、たいてい小さなことです。

施設の入居費用を親の口座から払おうとして、窓口で止まる。家を売って介護費用に充てようとしたら、本人の意思確認が必要だと言われる。

そうなったとき、家族が向かう先が、家庭裁判所の成年後見の申立てです。

この記事のポイント

  • 後見人等を選ぶのは家庭裁判所。本人との関係で見ると、親族は全体の16.4%
  • 報酬は本人の財産から。現行制度では原則として亡くなるまで続く
  • 2026年の改正で「必要がなくなれば終了できる」形に変わる(施行は2028年12月まで)

申立ての理由の9割は、預金

2025年の1年間で、成年後見の申立ては全国で43,159件でした。

申立ての動機(複数回答)を見ると、いちばん多いのは「預貯金等の管理・解約」で93.4%。次いで身上保護74.2%、介護保険契約45.7%、不動産の処分36.3%、相続手続25.6%です。

制度の目的は本人の財産と暮らしを守ることです。そのうえで、利用のきっかけとしては、預金を動かせなくなる場面が多いことが分かります。

後見人等のうち、親族は16.4%

2025年に選ばれた成年後見人・保佐人・補助人を本人との関係で見ると、親族は7,014件。全体の16.4%です。

残りは、司法書士、弁護士、社会福祉士など、親族以外の人でした。

ただし、「家族が申し立てても6分の1しか選ばれない」という意味ではありません。申立人の約4分の1は市区町村長で、もともと家族がいないケースも多く含まれています。

それでも、順序は押さえておく価値があります。家族は候補者を立てられますが、決めるのは家庭裁判所です。申し立てた時点では、誰が選ばれるか分かりません。

報酬は、親の財産から支払われる

後見人の報酬は家庭裁判所が決め、本人の財産から支払われます(民法862条)。

横浜家庭裁判所が示している、専門職が選ばれた場合のめやす(2025年4月1日版)は、次のとおりです。

管理する流動資産(預貯金・有価証券など)専門職の基本報酬(月額のめやす)
1,000万円以下2万円
1,000万円超、5,000万円以下3万〜4万円
5,000万円超5万〜6万円

特別に困難な事情があるときは、事案に応じて付加されることがあります。最終的な額は、裁判官が個別に決めます。

月2万円が10年続けば、240万円。現行の制度では、判断能力が回復しない限り、原則として本人が亡くなるまで続きます。

それでも、この制度を必要としている人がいる

申立人でいちばん多いのは本人自身で24.8%。次が市区町村長で23.7%(10,139件)です。

身寄りのない人、家族が動けない人にとって、この制度は財産と暮らしを守る受け皿です。制度が重いことと、制度が要らないことは、別の話です。

申立てから結果が出るまで

  • 審理は、2か月以内に終わったものが71.1%、4か月以内なら93.8%
  • 医師の鑑定が行われたのは3.4%
  • 申立てが認められたのは95.1%

申立ての多くは、数か月のうちに結果が出ています。判断の分かれ目になりやすいのは、その後のことです。誰が後見人になるか選べないこと、報酬が続くこと、そして現行制度では原則として終わらないこと。

2026年の改正で、利用したあとの仕組みが変わる

2026年6月に成立した改正法(令和8年法律第45号)で、次の点が変わります。

  • 後見・保佐・補助の3類型を、必要な行為ごとに権限を与える「補助」に一本化する
  • 判断能力が回復していなくても、必要がなくなれば利用を終了できる
  • 後見人を選ぶときに考える事情の先頭に、本人の意見を置く
  • 本人が適切な保護を受けられていないときは、交代できる

施行日は、公布から2年6か月以内の政令で定める日です(2026年10月15日時点で未定)。遅くとも2028年12月24日までに始まりますが、それまでは現行の制度が続きます。

決められるのは、親が元気なうちだけ

判断能力があるうちに、自分で後見人を決めておく「任意後見」という仕組みがあります。

ただ、利用者は2025年12月末で2,833人。法定後見の257,068人と比べると、極めて少ないのが現状です。

誰に任せたいか。それに答えられるのは、親本人だけです。

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更新日:2026年10月15日 執筆:行政書士 大塚栄一