同居している91歳の母から、「ATMでお金をおろしてきて」と頼まれました。脚が弱くなり、一人で銀行へ行くのが難しくなってきたからです。
母のカードと暗証番号を預かれば済む話。そう思っていましたが、いざカードを受け取ろうとしたとき、「本当にこれでいいのだろうか」という違和感がありました。
この記事のポイント
- 親のカードと暗証番号を使うのと、自分名義の代理人カードを使うのは、意味が違う
- 手続きには本人が窓口へ行く必要があった(今回の銀行の場合)
- 本人が判断できるうちにしかできない備えです
「家族だから下ろせる」とは限らない
母が使っている三井住友銀行には、家族が本人に代わって出金するための正式な仕組みとして「代理人キャッシュカード」がありました。
- 母のカードと暗証番号を、私が預かって使う
- 母が私を代理人に指定し、私に発行されたカードを私が使う
似ているようで、意味はまったく違います。
今は「いくら必要なの?」と聞けば、本人の意思をその場で確かめられます。けれど、認知機能が低下したあとも同じようにできるとは限りません。
問題は、今日1万円を下ろせるかどうかではありません。本人が自分で判断できる今のうちに、将来のための仕組みを作っておけるかどうかです。
ネットや郵送では手続きできなかった
銀行に「自宅やネット、郵送で手続きできないか」と聞くと、答えは「本人が窓口に来なければできない」でした。
最初は「91歳なのだから、もう少し柔軟にできないか」と思いました。けれど代理人カードは、本人の預金を別の人が引き出せるようにする、大きな権限です。
電話一本で設定できてしまう方が、むしろ不安です。本人が窓口に来れば、銀行は「本人の意思で代理人を指定している」ことを直接確かめられます。
91歳には、なかなかの手続きだった
窓口では、母自身が書類を書かなければなりませんでした。日付、名前、支店、口座番号、代理人の名前、新しいカードの暗証番号。
いつもなら「ここは私が書くよ」と代わるところですが、本人の意思で代理人を指定する手続きなので、そうはいきません。書き直しも何か所かありましたが、無事に終わり、カードは約1週間で届くとのことでした。
用意したものは、意外に少なかった
- マイナンバーカード(写真付きの本人確認書類)
- 預金通帳
- 届出印
手数料はかかりませんでした。かかったのは、往復のタクシー代と、せっかくの外出で一緒に食べた昼食代くらいです。
※必要なものや手続きの方法は、銀行によって違います。利用している銀行に確かめてください。
財産の多さは関係ない
成年後見や財産管理と聞くと、多額の預金や不動産を持つ人の話だと思われがちです。
でも、外出が難しくなる→家族がお金を下ろすようになる→認知機能が低下する、という流れはどの家庭でも起こりえます。多くの家庭では、「カード貸して」「暗証番号はこれね」で済ませているのではないでしょうか。
あわせて私は、頼まれて出金したときに「8月26日 1万円 母依頼・生活費」のような簡単な記録も残すことにしました。
親のカードと暗証番号を預かっている方へ
相続や遺言は「亡くなった後」の話と思われがちです。けれどその前に、「親が銀行へ行けなくなる」という現実があります。
親のカードと暗証番号でお金を下ろしている方は、一度、その銀行に代理人カードなどの制度がないか確かめてみてください。本人が元気で、自分の意思を伝えられるうちなら、まだ本人で手続きできます。
親御さまの備えのご相談
銀行の制度で足りるのか、任意後見や遺言まで準備した方がよいのか。ご家族の事情に合わせて一緒に考えます。
更新日:2026年10月15日 執筆:行政書士 大塚栄一

