事故・苦情・ヒヤリハット記録の二つの盲点|記録の範囲と虐待通報ルートを確認

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実務の急所5分解説
事故報告書、苦情受付簿、ヒヤリハット記録――様式があっても、運営指導で見ているのはそこではありません。「何を記録するか」と「どこへ報告するか」。運営指導で見落とされやすい2つの盲点を5分で整理します。

事故報告書の様式、苦情受付簿、ヒヤリハット記録――どの事業所も何かしらの様式は持っています。ただ、「様式があること」と「運営指導で求められる記録になっていること」は別の話です。

横浜市と埼玉県の指導資料を見ると、運営指導では「何を記録するか」と「どこへ報告するか」を混同しているケースが少なくありません。

最初に確認したいポイント

確認項目 確認内容
報告を要する案件の範囲 けが(受診したもの)、誤嚥、所在不明、食中毒・感染症など、県・市への報告が必須な事案を把握しているか
軽微な事故の記録 報告不要な軽微な事故・ヒヤリハットも、記録として残しているか
対応フローの記録 状況確認から利用者家族への説明まで、一連の対応を記録として残しているか
虐待通報の窓口 虐待の疑いに気づいた場合の通報先(市町村)を、事故報告の提出先と区別しているか

実務ポイント:見落としやすい2つの盲点

盲点 実務内容
盲点1:「報告を要する案件」だけ記録すればいいという誤解 横浜市の集団指導資料は、県・市への報告が必須となる「報告を要する案件」の一覧を示す一方で、「報告を要する案件に限らず、事業所における事故・苦情等については、必ず記録をし、必要に応じて報告を行ってください」と明記している。報告義務の有無と記録義務の有無は別物であり、軽微な事故やヒヤリハットも記録そのものは省略できない。原因究明や再発防止策まで記録として残すことが求められる。
盲点2:虐待の疑いを「事故」として処理してしまう誤解 埼玉県の指導資料は、障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した人に、市町村への通報義務があると説明している。通報は「義務」であり、管理者等が職員を注意して終わらせ、通報しないで済ませることはできない。事故報告書の提出先が県・市の障害福祉担当課であるのに対し、虐待の通報先は市町村であり、窓口も法的根拠も異なる独立したルートになる。

運営指導で確認される記録のポイント

横浜市の資料が示す事業者側の対応フローは、状況確認・関係機関への連絡・問題点の洗い出し・解決策の検討・法人内周知・利用者家族への説明までが一連のものとして描かれています。様式の空欄を埋めるだけでなく、原因究明や再発防止策まで記録として残す必要があります。

事故対応も虐待対応も、「様式があるから大丈夫」ではありません。運営指導で確認されるのは、必要な記録が残され、適切なルートで対応されていたかです。

実務チェックリスト

次の5点を確認してください。

  1. 軽微な事案の記録
    「報告を要する案件」に該当しない軽微な事故・ヒヤリハットも、記録として残しているか
  2. 記録の内容
    記録は「発生した事実」だけでなく、原因究明・再発防止策まで含んでいるか
  3. 家族への説明
    事故対応は、利用者家族への説明まで一連の流れとして行われているか
  4. 虐待事案の切り分け
    虐待が疑われる事案を、事故対応の社内ルートだけで処理していないか
  5. 通報の判断
    虐待の疑いに気づいた場合、管理者の判断で通報を見送っていないか

まとめ

事故報告書・苦情受付簿・ヒヤリハット記録は、様式を整えるだけでは足りません。この2点は、運営指導で確認されやすいポイントです。事故対応の手順と虐待対応の通報ルートを改めて確認しておきましょう。

本記事は、横浜市「令和7年度障害者総合支援法横浜市指定事業者集団指導~共通資料~」、埼玉県「運営指導での主な指摘事項に関するQ&A」をもとに作成しています。今回収集した自治体資料で確認できた指摘事例に基づくものであり、全国的な傾向を示すものではありません。

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