虐待防止委員会、二つの盲点――「年1回」を「年度に1回」と考えていませんか

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実務の急所5分解説
虐待防止委員会の「年1回以上」。愛知県・大津市など複数自治体の資料を確認すると、この言葉を「年度に1回」と読んでしまうと危険なことがわかります。

障害福祉サービス事業所の運営基準は、虐待防止委員会を「定期的に(年1回以上)」開催することを求めています。この「年1回以上」を「今年度中に1回やればよい」と捉えている場合は、注意が必要です。

今回、愛知県・大津市・茨城県・長野県・埼玉県・横浜市の集団指導資料・運営指導資料を横断して確認したところ、運営基準そのものの文言は共通でも、自治体資料では実務上の解釈や注意点の示し方に違いが見られました。この差の中に、多くの事業所が見落としがちなポイントがあります。

この記事では、5分で確認できる範囲に絞って、開催頻度の考え方と、一体運営時の記録の残し方について整理します。

最初に確認したいポイント:自治体資料での表記の違い

自治体・資料 開催頻度の表記 「年度」に関する言及
愛知県(虐待防止委員会) 1年に1回以上の開催 (年度でない)と括弧書きで明記
大津市(身体拘束適正化検討委員会) 少なくとも1年(365日)に1回 「少なくとも1年度に1回ではなく」と明記
茨城県 定期的に(年1回以上) 言及なし(一体運営・記録分離の明記あり)
長野県 定期的(年1回以上) 言及なし(一体運営可の明記あり)
埼玉県 委員会の開催 年1回以上 言及なし
横浜市 定期的に開催 言及なし(未実施減算1%の明記あり)

実務ポイント① 「年度」ではなく「1年」で数える自治体がある

愛知県が公表している令和7年度集団指導資料(G分冊)では、虐待防止委員会の開催について「1年に1回以上の開催(年度でない)」と、わざわざ括弧書きで注記しています。同様の注記は、同資料の身体拘束適正化検討委員会の開催規定にも見られます。

さらに踏み込んだ説明をしているのが大津市です。大津市の集団指導資料は、身体拘束適正化検討委員会について「委員会の開催は、少なくとも1年度に1回ではなく、少なくとも1年(365日)に1回、開催する必要があります」と明記しています。前回開催から1年間を超えない運用が求められていることを示しており、「令和7年度中(4月〜翌3月)に1回やればいい」という発想では足りない可能性があります。

なお、大津市のこの規定は身体拘束適正化検討委員会について述べたものですが、同資料では「委員会は虐待防止委員会と一体的に設置・運営することができます」とも述べています。一体的に運営する場合に365日基準がどう扱われるかまでは資料から確認できませんが、少なくとも「年度」という区切りで安心してよい根拠は見当たりません。

確認内容 実務上の対応
前回開催日 委員会の直近の開催日を記録から確認する
次回予定日 前回開催日から1年間を超えない時期に設定する
年度基準の運用になっていないか 「今年度中に1回」という発想での予定組みになっていないか見直す

実務ポイント② 一体運営は可能だが、それぞれの内容が分かる記録を残す

茨城県の運営指導資料は「虐待防止委員会は身体拘束適正化検討委員会などと一体的に設置運営ができ、虐待防止研修は身体拘束等の適正化のための研修などと一体的に実施することができますが、その場合は、実施記録で分かるように残しておいてください」と明記しています。長野県の資料でも、身体拘束等の適正化のための委員会について「虐待防止委員会と一体的に設置・運営することも可」と確認できます。

一体運営そのものは複数の自治体資料で認められています。ただし、実施記録では、虐待防止委員会と身体拘束適正化委員会、それぞれの内容が分かるように記録しておく必要があります。具体的には、次の内容が記録の中で判別できるかがポイントです。

  • 虐待防止委員会としての検討内容:虐待防止のための計画づくり、虐待発生後の検証と再発防止策の検討など
  • 身体拘束適正化委員会としての検討内容:身体拘束等の報告様式の整備、発生事例の分析と適正化策の検討など

議事録を1本にまとめている場合でも、この2つの役割が読み手にわかる形で記載されているかを、一度確認しておくと安心です。

注意点・誤解しやすい点

複数自治体の資料を確認する中で、次のような誤解が生じやすいことがわかりました。

Q. 「年度内に1回」やっていれば大丈夫ですか?

愛知県・大津市の資料を見る限り、「年度」ではなく実際の1年(365日)を単位として運用することが求められています。年度内であっても、前回開催から1年を超えていれば要件を満たさない可能性があります。

Q. 大津市の「365日ルール」は虐待防止委員会にもそのまま当てはまりますか?

大津市の資料でこの規定が明記されているのは、身体拘束適正化検討委員会についてです。同資料は両委員会の一体運営を認めていますが、一体運営時に365日基準がどう扱われるかは資料からは確認できません。少なくとも「年度」という区切りで安心してよい根拠はない、という点を押さえておくのが安全です。

Q. 一体運営する場合、記録も1つにまとめてよいですか?

茨城県・長野県の資料では一体運営が認められていますが、茨城県の資料は「実施記録で分かるように残しておいてください」と明記しています。虐待防止委員会としての検討内容と、身体拘束適正化委員会としての検討内容を、それぞれ判別できる形で記録する必要があります。

Q. 未実施の場合、どのようなリスクがありますか?

横浜市の資料では、虐待防止措置未実施減算として所定単位数の1%減算が明記されています。長野県の資料でも、虐待防止委員会の未開催等が確認された場合、事実が生じた月の翌月から基本報酬が減算されると記載されています。

確認しておきたいこと

今回の資料確認をもとに、実務上のチェックポイントを整理しました。

  1. 前回の虐待防止委員会の開催日はいつか
    記録・議事録から直近の開催日を確認する
  2. 次回の開催予定日は、そこから1年以内に設定されているか
    「年度内に1回」ではなく、前回開催日を起点に予定を組む
  3. 身体拘束適正化委員会と一体運営している場合、両方の検討内容が記録上で判別できるか
    議事録に両方の役割が読み取れる記載があるか確認する
  4. 未実施の場合の減算リスクを認識しているか
    横浜市の例では所定単位数の1%減算とされている

まとめ

虐待防止委員会の「年1回以上」という要件は、多くの事業所にとって馴染みのあるルールですが、その「年1回」を「年度に1回」と読むか「1年(365日)に1回」と読むかで、実務上の運用は変わってきます。

愛知県・大津市の資料は、この点について踏み込んだ注記をしています。一方で、明確な言及がない自治体資料も少なくありません。自事業所が該当する自治体の資料でどう表記されているかにかかわらず、「年度内に1回やればよい」という運用にはリスクがある、という前提で確認しておくことをおすすめします。

あわせて、身体拘束適正化委員会との一体運営を行っている場合は、記録の残し方も見直しの対象になります。

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