送迎加算の2つの盲点――届出だけでは算定できません

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実務の急所5分解説
送迎加算は、届出をすれば通年もらえるものではありません。ある事業所では、月平均「9.9人」というわずか0.1人の差で区分が変わっていました。

生活介護や就労継続支援などの通所系サービスでは、送迎加算(Ⅰ)(Ⅱ)を届け出ている事業所は多いはずです。

しかし今回収集した自治体資料(埼玉県・大津市・愛知県・横浜市)では、「届出をしているのに算定要件を満たしていない月がある」「送迎費を徴収しているのに実費計算をしていない」という2つの見落としが繰り返し指摘されていました。

本記事では、大津市の資料にあった「平均9.9人」の具体例を軸に、現場で見落とされやすいポイントと、今日から確認できるチェック項目を整理します。

最初に確認したいポイント

項目 確認内容
毎月の実績集計 送迎回数・延べ利用者数から平均利用者数を算出しているか
週3回以上の実施 送迎実施記録で確認できるか
送迎先の範囲 自宅⇔事業所(または事前合意した特定の場所)に限られているか
実費との整合 送迎費を徴収している場合、年1回以上実費を確認しているか

送迎加算(Ⅰ)(Ⅱ)とは

送迎加算は、生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)などの事業所が、利用者の居宅(グループホームを含む)と事業所の間で送迎を行った場合に、片道1回として算定できる加算です。放課後等デイサービスなど障害児通所系サービスにも、考え方が近い送迎加算があります。

区分の要件 内容
要件① 1回の送迎につき利用者数が平均10人以上(定員20人未満の事業所は定員の50%以上)
要件② 週3回以上の送迎を実施
送迎加算(Ⅰ) ①②の両方を満たす月
送迎加算(Ⅱ) ①②のどちらか一方のみ満たす月

つまり(Ⅰ)と(Ⅱ)は事業所が任意に選べるものではなく、その月の送迎実績によって自動的に区分が決まる仕組みです(埼玉県・横浜市資料より)。

現場でつまずく2つの盲点

盲点1:「平均10人」はギリギリでは通らない

大津市の資料には、定員20人の事業所が実際に送迎加算(Ⅰ)の体制届を出していたケースの検証例が示されていました。

開所日数25日のうち送迎を実施したのは49回、延べ利用者数は486人。486÷49を計算すると平均9.9人となり、10人にわずかに届かず、その月は送迎加算(Ⅰ)ではなく(Ⅱ)でしか算定できないという結果になっています。

この「9.9人」という数字が象徴的なのは、届出をした時点の体制がそのまま維持されているとは限らない、という点です。埼玉県の資料でも「届出を行えば通年を通じて加算されるものではない」「要件を満たさなかった月は算定できない」と明記されており、月ごとの集計・検証を怠ると、知らないうちに過大請求になっているリスクがあります。

さらに、送迎先が事業所と自宅の間に限られる点にも注意が必要です(愛知県資料)。病院や他事業所への送迎は加算の対象にならず、横浜市の資料でも「利用者や事業所の都合で特定の場所以外(病院など)へ送迎した場合や、居宅へのルート途中で下車した場合は対象外」とされています。行き先が広がるほど、対象外の送迎が紛れ込みやすくなります。

盲点2:送迎費を徴収しているなら、実費計算はセットで

もう一つの盲点は、送迎加算を算定しながら利用者から送迎費(実費)を別途徴収しているケースです。

埼玉県の資料では、「送迎に係る経費(燃料費等の実費)が送迎加算の額を超える場合に限り、その差額を利用者から徴収できる」とされており、超えていないのに徴収していた事例、逆に運転手当や車両購入費まで経費に算入していた事例が指摘事項として挙げられていました。

つまり、送迎費を徴収している事業所は、少なくとも年に1回、送迎に係る実費(燃料費等)を算定し直し、送迎加算額を上回っていることを確認する作業が必要ということになります。これを怠ると、「加算はもらい、費用も二重に取っている」とみなされかねません。

事業所で今日から確認できること

以下は、今回確認した自治体資料に共通する確認項目です。順番に確認していくことをお勧めします。

  1. 毎月、送迎実施回数と延べ利用者数を集計しているか
    両者から平均利用者数を算出しているか
  2. 週3回以上の送迎実施を記録で確認できるか
    実施日・回数が記録として残っているか
  3. 送迎先が「自宅⇔事業所」に限られているか
    病院や他事業所への送迎、ルート途中の下車が紛れ込んでいないか
  4. 送迎費を徴収している場合、実費を年1回以上確認しているか
    燃料費等の実費が加算額を上回っていることを確認しているか
  5. 送迎記録に「誰が」「いつ」利用したかを残しているか
    利用者ごとの記録として整理されているか

まとめ

送迎加算は日々の運行があるだけに「毎月請求して当然」という感覚になりがちですが、行政資料が示す実例は、平均利用者数がわずかに基準を下回るだけで区分が変わってしまうことを教えてくれます。

まずは直近1〜2か月分の送迎記録を洗い出し、平均利用者数を実際に計算してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

※本記事は埼玉県・大津市・愛知県・横浜市が公表した運営指導・集団指導資料をもとに構成しています。取扱いの詳細は必ず各事業所の指定権者(都道府県・市)の最新資料をご確認ください。

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